"義母を無償介護した3年、夫は私の名義で毎月15万円を受け取っていた" 第5話
しかし、私の目は、その直――毎20に記録されている、別の取引履歴に吸い寄せられた。
15万円が引き落とされる数、理恵の座には、毎決まって『ある額』がから振り込まれていた。
その額、270,000円。
15万どころではない。 毎、27万円というまとまったが、どこかから理恵の座に入され、そのから15万円が夫の座へとからへ流れていた。
そして。 その27万円の振込元の名義欄は、スマートフォンの画像編集能を使ったのだろう、太く自然な黒いマーカーで、執拗なまでに塗りつぶされていた。
黒く塗りつぶされた、数ミリの隙。 雑な跡で塗りたくられたデジタルインクの端から、わずかに文字だけ、消し損ねた文字の輪郭がはみしていた。
カタカナの、「セ」。
節子。 義母の名だった。
喉の奥に、ざらりとした砂を流し込まれたような覚が広がった。
理恵は、自分ので15万円をしていたと言った。 最初の1はパート代から面していたと、先ほどのメッセージにもいてあった。 けれど、この細が示している現実は、全く違う。
義母の座から、毎27万円が理恵の座へ。 そこから15万円が、夫の座へ。 そして私の元には、1円も届かず、46万円の介護用品の領収だけが元に残されている。
……27万円? 万ですら、寝にだった。
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それなのに、義母の座からは、毎27万円ものが消えている?
私はスマホを握りしめたまま、ベッドの縁に腰を掛け直した。 窓のでは、のい陽射しが、たいビルに揺れている。 の効いたホテルの部にいるはずなのに、の先からじわじわと覚がなくなっていくようだった。
理恵がなぜ、あんなに必になって「母さんの座は関係ない」「調べる必はない」とを押してきたのか。 そのパズルのピースが、音をてて噛みっていく。
理恵は、夫が15万円を抜きしていたことをっているのではない。 夫の嘘が暴かれたことで、自分が義母の座から毎引きしていた『27万円』のに、私の目が向くことを恐れているのだ。
ピピッ、とスマホの画面が切り替わった。 今度は、夫からの着信だった。 画面に点滅する「修平」の文字。
私は通話ボタンを押さず、着信音が止まるのをただ静かに見つめた。 10回、15回。 部のに響く子音は、やがて途切れ、再び気な静寂が戻ってきた。
夫は今頃、自宅のリビングで爪を噛んでいるはずだ。 理恵もまた、自分のマンションで、私が送細の「黒塗り」に気づいたかどうか、怯えながらスマホを握りしめているに違いない。
そして、あのには今、何もらない義母がで取り残されている。 自分が毎、私の介護のためにいくら払っているとい込んでいるのか。
なぜ、私が「を貰っているくせに偉そうに介護する嫁」として、鍵まで変えて追いされなければならなかったのか。
私はく、ゆっくりと息を吐きした。 いシャワーを浴びる気にも、のように眠る気にも、もうなれなかった。
バッグのから、用している黒い帳と、病院のネームホルダーを取りす。 帳の最初のページには、義母を担当している域包括支援センターのケアマネジャー、渡辺さんの直通番号がかれていた。
計の針は、午1を回ろうとしている。
私はスマホのキーパッドをき、渡辺さんの番号を迷うことなくタップした。 コール音が、元で静かに鳴り響く。
戦いは、に鳴り散らすことじゃない。 で喚けば、向こうは「ヒステリーを起こした嫁」として片付けるだろう。 必なのは、と数字と、公な記録だ。
「……もしもし、です。渡辺さんでしょうか。お忙しいところ申し訳ありません。実は、至急ご相談したいことがありまして」
話にたケアマネジャーの落ち着いた声を聞きながら、私は帳ののページに、ペン先を力くらせ始めた。
ビジネスホテルのいデスクに、義母の『介護保険被保険者証』のコピーを広げた。
窓のは、すでに夕がりてきている。 受話器を握るのひらに、じっとりとたい汗が滲んでいた。
呼びし音が回鳴った、聞き慣れた穏やかな女性の声が返ってきた。