"百日祝いを門前払いされた娘に、24年後届いた祖母の手紙" 第10話
「何の用?」
私の拒絶の滲む声に、悠は袈裟に両を挙げてみせた。
「何だよ、てえな。せっかくぶりに姉弟が会えたってのにさ。ちょっと茶でもしばこうぜ。事な話があるんだよ」
悠は私の返事も待たずに、駅のチェーンのカフェへと歩きした。 私はち止まり、その背を睨みつけたが、すぐにを追った。 この男が何を企んでいるのか、どこまでっているのかを確かめる必があった。
カフェの階席の隅、アクリル板を挟んで悠と向かいった。 悠は運ばれてきたカフェラテにをつけると、貧乏ゆすりをしながら私を値踏みするように見つめてきた。
「ばあちゃん、ってたんだろ? さっき親父から話あってさ、姉貴が嗅ぎ回ってるみたいだって焦ってたぜ」
悠は悪びれる様子もなく、煙を取りそうとして禁煙マークに気づき、舌打ちをしてポケットにねじ込んだ。
「単刀直入に言うわ。姉貴さ、来のばあちゃんの誕、絶対に来てよ」
「……どうして?」
「どうしてって、族だからだろ?」
悠はヘラヘラと笑いながら、を乗りしてきた。
「親父もさ、昔は々あったかもしれないけど、今は反省してんだよ。姉貴に申し訳ないことしたって、ずっと気にしててさ。でもさ、今の俺ん、ちょっと回りがキツくてさ」
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回り。 その単語がた瞬、私の神経が鋭く尖った。
「アンタ、文具メーカーで正社員やってんだろ? 取りは普通でも、ボーナスもるし定してんじゃん。それに、あっちの母親もさ、古いけどあの持ちのアパートあんだろ? 売ればそこそこのになるしさ」
私は絶句した。 この男は、私の勤め先だけでなく、母が細々と暮らすアパートの資産価値まで調べている。
「何が言いたいの?」
「だからさ、族なんだから助けおうぜって話。親父ももう歳だし、俺も今、ちょっと事業で躓いててさ。親戚から集まるだけじゃ、首が回らねえんだよ」
事業で躓いている。 叔母から聞いた、百万円の募。 そして悠のこのなりと、焦燥の滲む目。
すべてが本の線で繋がった。
「……あなたの借なのね?」
私のたい指摘に、悠の笑顔がピタリと凍りついた。
「百万円。親戚から集めようとしているあのおは、あなたの借を埋めるためのものなんでしょう?」
沈黙が流れた。 カフェの賑やかなBGMが、異様なほどくに聞こえる。 悠の目が細まり、懐っこい弟の仮面が、音をてて剥がれ落ちていくのが見えた。
「……ってんなら話がえわ」
悠はく濁った声で吐き捨て、肘をテーブルについた。
「俺がちょっとfxと事業投資で失敗して、百万ほど穴けちまったんだよ。
じゃねえけど、来までにどうしてもまとまったが必なんだ。親父が『灯の名を使えば、親戚の寄りどもからいくらでも引っ張れる』って言ったんだよ。実際、もう百万は集まったしな」
吐き気がした。 実の父親が、息子の借を返すために、に捨てた娘に『致性の難病』のレッテルを貼り、親戚からを巻きげている。 そしてこの弟は、それを当然の権利のように受け止めているのだ。
「ふざけないで」
私の声は、く震えていた。
「私はあなたたちの具じゃない。そんな詐欺に加担する気なんて、これっぽっちもないわ」
ちがろうとした私の首を、悠が素く掴んだ。 その力はく、骨が軋むほどの痛みがった。
「痛っ……! しなさいよ!」
「おい、待てよ姉貴」
悠は座ったまま、酷なを宿した瞳で私を見げていた。
「加担する気がない? 冗談だろ。もう親戚には話が回ってんだよ。『灯ちゃんがな病気で苦しんでる』ってな。今さらおが『元気です、詐欺でした』なんて言ってみろよ。佐久の親戚が混乱になって、親父も俺も、ばあちゃんだって世体でぬしかなくなるぞ?」
「自業自得でしょう!」
「あのさあ、現実見ろよ」
悠はで笑い、私の首をさらにく締めげた。
「おが黙って誕会に来て、みんなので涙ぐんで祝儀袋を受け取れば、誰も傷つかねえんだよ。
親戚は『いいことした』って満する。俺の借は消える。親父のメンツも保たれる。おだって、族として迎え入れてもらえるんだぜ? 何が満なんだよ」