"百日祝いを門前払いされた娘に、24年後届いた祖母の手紙" 第7話
娘のプライドを傷つけないために、病気のことは本には切触れるな』って……」
叔母の言葉が、途切れ途切れにしかに入ってこない。
サプライズ? プライドを守るため? 違う。 全部、真逆だ。
私が何もらないままそのに現れ、笑顔で祝儀袋を受け取ってをげる。 その瞬を写真や画に収めれば――『本が支援を受け取ったかぬ証拠』が完成する。 親戚たちは私が治療費を受け取ったと信じ込み、父は集まった数百万円をそのまま自分の懐に収めることができる。
そのための、あの認親のだったのだ。 そのための、あの偽造された百祝いの写真だったのだ。
「……叔母様、そのお、もう誰か払ったんですか?」
私の絞りすような問いに、叔母は青ざめた顔でさく頷いた。
「……ええ。私と、もうの叔父さんで、付として万ずつ……計百万円を、先週、修司さんの座に振り込んだわ」
実のアパートに戻った、はすっかりが暮れていた。
玄関をけると、台所から汁の匂いがした。 母が割烹着姿で鍋のにち、根を煮ている。 その背は、私が子どもの頃から見てきた、し丸みを帯びた、けれど決して折れることのなかった母の背だった。
「お母さん」
私が声をかけると、母は笑顔で振り返った。 けれど、私の青ざめた顔と張ったち姿を見て、すぐにを止めた。
広告
「灯……? どうしたの、顔が真っよ」
私はダイニングテーブルに鞄を置き、叔母から見せてもらった振込控えの写真を母のに差しした。 そして、今ったすべてのことを、震える声で吐きした。
私学の入学祝いとして万円が騙し取られていたこと。 今、私が悪性リンパ腫という名目で親戚から百万円を集められようとしていること。 すでに百万円が、父の座に振り込まれていること。
母はったまま、私の言葉を言も漏らさずに聞いていた。 その表から血の気が消え、やがて唇をく噛み締めた。 噛み締めた唇から、血が滲みしそうだった。
「……そこまで、あのたちは腐っていたのね」
母の声は、く、くをうようだった。 りで肩がかすかに揺れている。
「お母さん、父が私に見せたがあるの」
私はホテルのラウンジで父が見せてきた、母の絶縁状の話をした。
『今切の接触を拒否します。娘のに度と姿を现さないでください』
「父は、お母さんが頑なに拒絶したから、親戚を通じてながら支援するしかなかったって言ってた。あのは……本当にお母さんがいたの?」
母は静かに目を閉じ、く息を吸い込んだ。
「……ええ。私がいたわ。文字も違いなく、私の字よ」
母は目をけると、寝からあのクッキーの缶を再び持ってきた。
から取りしたのは、枚の黄ばんだ便箋のコピーだった。
「あのにはね、があるのよ」
母が広げた類を見て、私は息を呑んだ。 そこには、父の几帳面な跡で、信じられない求がき連ねられていた。
『会社の役員や親族が集まる事会に、灯を連れて席したい。 ただし、奈穂との婚姻関係やしくまれる子どものもあるため、灯の素性については「同僚の親戚の子をに預かっている」という扱いにさせてほしい。 父親として認している事実や、美紀さんとの過の関係については、を乱さないよう切しないことを条件とする』
喉の奥から、ヒュッとたい空気が漏れた。
実の父親が。 自分の浮気で作ったしい庭と体面を守るために。 実の娘を『同僚の親戚の子』と偽って、の群れのに晒し者にしようとしていた。
「お父さんはね、自分の昇や親戚への体面のために、あなたを具として利用しようとしたのよ」
母の瞳に、静かな涙が浮かんでいた。
「父親だと名乗ることも許さず、の子として事会の片隅に座らせるなんて、そんな残酷なこと、母親として絶対に許せなかった。だから私はあのを叩きつけて、度と私たちのに現れるなって追い返したのよ」
母は震える指で、便箋の文字をなぞった。
「あのは、私があなたを守るためにいた拒絶の言葉を都よく切り取って、自分が親戚からを騙し取るための『言い訳』に使っていたのね……」