"ローンを完済した私に、義母は「家なら売った」と言った" 第12話
息子が若い女にマンションを買い与えていたこともっていた。そして、私を追いして自分だけがそのマンションに転がり込む計画をてていた」
「そ、それは……彦が、あんたには言うなって……!」
「私の作ったご飯を『い』となじり、壊れかけの蔵庫を使い続ける私を『気が利かない』と嘲笑いながら、裏では私のを奪う算段をしていた」
私は歩、義母から距を取った。 すがりついていた義母のが、力なく虚空を掴んで落ちる。
「全部、っていたのに。度だって、私に『彦が勝に売ろうとしている』と教えてくれましたか? 度だって、私を族として扱ってくれましたか?」
義母はをパクパクとかしたが、何の言葉もてこなかった。 線は泳ぎ、額からや汗が滲みている。 都が悪くなると、このはいつもこうだ。
「わ、私は寄りだから……難しいことは分からないのよ……!」
泣き真似をしながら顔を覆う義母を、私はただ徹に見ろした。 もう、何のも湧かなかった。 憐れみも、りすらも。
私はテーブルのにあった『覚』を両で持ち、夫の目ので、真んからビリビリと引き裂いた。
「おい! 何をするんだ!」 夫が血相を変えてちがった。
私は裂いたをつに折り、さらに細かく引き裂いて、テーブルのにぶちまけた。
「買い戻しなんて、絶対にしません」
広告
「な……お、このを捨てる気か!? のいはどうなるんだ! おが番執着してたんじゃないのかよ!」
夫の鳴り声に、私は静かに首を横に振った。
「執着していたのは、じゃないわ」
喉の奥が、すっと軽くなるのをじた。 目のを覆っていたが、瞬でれていくようだった。
「私が執着していたのは、耐え続けた自分の苦労よ。を放したら、私のが全部無駄になってしまうとい込んでいただけ。でも、違ったわ」
私は夫の濁った瞳を、まっすぐに見据えた。
「このは、あなたたちが私を縛り付け、利用し、都のいい政婦として飼い殺すための檻だった。そんなものに千百万も払って、その、あなたのお母さんの介護まで押し付けられるなんて……冗談じゃないわ」
「澄子……!」
「お義母さんの面倒は、ご自分でどうぞ。実の息子であるあなたに、扶養の義務がありますから」
私は踵を返した。 背で、夫が「待て! 話を聞け!」と喚き散らす声と、義母が「見捨てないでよ!」と泣き叫ぶ声がなって響いた。
階の自に入り、ドアに鍵をかけた。 臓は激しく波打っていたが、議なほどは冴え渡っていた。
スマートフォンを取りし、弁護士の直通番号をタップする。 ワンコールで、落ち着いた声が返ってきた。
「はい、法律事務所です」
「先。澄子です」
私は呼吸をして、はっきりと告げた。
「買い戻しは、やめました。あのは、放します」
話の向こうで、弁護士がさく息を呑む気配がした。
「……そうですか。賢なご決断だといます」
「はい。ですから、次の続きにんでください。夫が隠している座の調査、そして浦織に流れた千百万円の保全続きです。の退までに、あの男たちが隠したおを、円残らず法に差し押さえてください」
「承いたしました。すぐに仮差押えの申しての準備に入ります」
通話を切り、私は窓のを見げた。 鉛のが広がる埼玉の空。 庭の隅にある犀のが、に揺れていた。
さようなら、私の。 もう度と、誰かの犠牲になるために自分を売りしたりはしない。
私は古いスーツケースをけ、自分だけの荷物をまとめる準備を静かに始めた。
見らぬ番号からショートメッセージが届いたのは、買い戻しの覚を破り捨ててからのことだった。
『岸本澄子様でしょうか。突然の躾なご連絡をお許しください。浦織と申します。弁護士さんを通すに、度だけ、おでお話しさせていただけないでしょうか』
スマートフォンの画面を見つめたまま、指先がすっとたくなった。 喉の奥がカラカラに渇く。
浦織。 歳。
夫がのがを売り払い、千百万を注ぎ込んで居を買わせた相。
会うべきか、無して弁護士に丸投げするべきか、迷いは瞬だった。