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"ローンを完済した私に、義母は「家なら売った」と言った" 第4話

夫は舌打ちをし、証をテーブルのに放りした。

「嗅ぎ回るような真似をしやがって。どうせには話すつもりだったんだよ」

「話すつもり? あとヶしかないのよ! 私は、こののために働いてきたの! それを勝に売って、定期借にして、に追いすつもりだったの!?」

「追いすとは言ってないだろうが!」

夫が声を荒らげた。 その鳴り声に、義母が奥の部から顔を覗かせる。

「何よ、騒々しいわねえ」

「母さんは引っ込んでろ!」 夫は義母をすると、私に向き直り、居直るように胸を張った。

「しょうがなかったんだよ! このを維持するのだってがかかるんだ! 固定資産税だって修繕費だってある! 俺が全部背負ってきたんだ! 売れるうちに売って現化するのが何が悪い!」

「じゃあ、契約を見せて」

私は歩も引かなかった。 喉の奥はカラカラに渇いていたが、線だけは夫の瞳から逸らさなかった。

「契約? 何のだよ」

「売買契約よ。いくらで売ったの。残ったおはどうしたの。見せなさいよ!」

夫は私の気迫に気圧されたのか、わずかに線を泳がせた。 だがすぐに、ふん、とを鳴らした。

「見せてもいいが、おが見たってどうにもならんぞ」

夫は階の斎へがり、数分、茶い革のファイルを持ってりてきた。 テーブルのに放りされたのは、分い産売買契約と、定期借契約の控えだった。

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私は震えるで、売買契約の表をめくった。 売買代の欄に印字された数字。

【 弐阡捌陌萬円也(28,000,000円)】

千百万円。

文字が、網膜に焼き付く。 この郊の、築の造宅が、千百万円で売れていた。 ので、猛烈な勢いで計算が回り始める。

千百万円。 そんなが、体どこへ消えたというのか。 残債の返済? 諸経費? 母の老資?

「……彦さん。このお、どこにあるの?」

私の問いに、夫は腕を組み、笑を浮かべてこう言い放った。

「言っただろうが。もう残っちゃいないって。全部、消えたんだよ」

千百万円ものが、たったで消えるはずがない。

夫は自に籠もり、リビングには私と、テレビの音だけが残された。 義母は「息子のの使い方にをすなんて、図々しい嫁」とブツブツ文句を言いながら、自分の部へ引きげていった。

私は、階段の納戸へ向かった。 埃っぽい空気の、奥に押し込まれていた古いプラスチックケースを引っ張りす。 そこには、私が几帳面に保管してきた、に関するありとあらゆる類が眠っていた。

番から取りしたのは、平成()の付が入った宅ローンの『返済予定表』だ。 毎送られてくる残証も、クリップで几帳面に留めてある。 私はスマートフォンの卓をき、――令の欄を探した。

【令 ローン残:百万千百円】

息が止まりそうになった。

「……百、万……?」

何度も卓の数字を打ち直した。 違いない。 の点で、残りの宅ローンは、たったの約百万円だったのだ。

のうち、を支払い終えていた。 元のほとんどは返済がみ、残りはわずか百万円。 数料や抵当権抹消の登記費用、産仲介数料をめに見積もって百万円引いたとしても。

千百万円から、百万円を引く。 元には、確実に【千百万円】の現が残っていたはずなのだ。

千百万円。 方都なら、さな古マンションが括で買える額だ。 それを、夫は「残債の処理で残っていない」と嘘をついた。

背筋をたい汗が伝う。 あの男は、最初から私を騙す気満々だったのだ。 を売り払い、に入った千百万円をどこかへ隠し、私には「万円のローン」と偽って賃を払わせ続けていた。 搾り取れるだけ搾り取って、の契約満とともに、私を無文で追いすために。

「許さない……」

声が震えた。 涙はなかった。あまりの悪のさに、涙すら枯れ果てていた。 私は埃まみれの納戸ので、夫の私物を当たり次第に調べ始めた。 斎のデスクの引きし、本棚の奥、古い帳のケース。 夫は数字にいが、どこか自分を過信していて、証拠の隠滅が甘いところがある。

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