"ローンを完済した私に、義母は「家なら売った」と言った" 第3話
『登記事項証』
まだ複写のが残るそのを、震える指先で広げた。 文字が細かく並ぶ表の、私の目は真っ先に【甲区(所者に関する事項)】へと吸い寄せられた。
そこにあったのは、夫の名ではなかった。
【権利者そのの事項】 原因 令売買 所者 京都港区……株式会社〇〇アセットパートナーズ
息が止まった。 令。〇。 本当に、だ。 夫の言う通り、このはとっくにのものになっていた。 法務局のロビーのベンチに座り込み、私は類を握りしめた。 がクシャリと音をてる。
あのは、私に何の相談もなく、印鑑証と権利証を持ちし、このを丸ごと法に売り渡したのだ。 私には、登記の持ち分はない。 、を買うとき、の窓で夫は言ったのだ。 「続きが面倒だから名義は俺にしておくよ。支払いはで半分ずつ頑張ろう」 その言葉を、疑いもせずに信じ込んだ歳の自分が、今の私を奈落の底へ突き落としていた。
私は証に記載されていた管理会社の話番号を調べ、震えるでスマートフォンを操作した。 コール音が数回鳴り、事務な女性の声がる。
「はい、〇〇アセット管理窓でございます」
「あの……私、埼玉の物件にんでいる岸本と申します。自宅の……いえ、現の賃貸契約について確認したいのですが」
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「岸本様ですね。々お待ちください……はい、物件の確認が取れました。こちらは現、定期建物賃貸借契約となっておりますね」
「定期……建物賃貸借?」
「はい。期はのご契約です。貸主様と借主である岸本彦様とので締結されております」
臓が、嫌なね方をした。 定期借。 更のない、期限が来れば必ずけ渡さなければならない契約。
「……あの、その契約の期限は、いつまでになっているでしょうか」
話の女性は、パソコンのキーボードを叩く音をてた、事務に告げた。
「本、〇までとなっております。に入居者様宛てに、期満に伴う再契約および退についての事通をお送りしておりますが、ご確認いただけておりますでしょうか?」
「……え」
「通は、ご契約者である彦様宛てに簡易留で送付済みとなっております。末までに原状回復の、け渡しをっていただくスケジュールとなっておりますので……」
相の声が、くなる。 。 あとヶ。
「……あ、あの、賃は、おいくらで契約されているのでしょうか」
「契約内容の詳細はお話ではお答えできかねますが……契約記載の正規額賃料は、万千円となっております」
万千円。 私が毎、夫の座に振り込んでいたのは万円。
夫は、差額の万千円だけをして、このに「居座るための」を買っていたのだ。 そして、に届いていたはずの退通を、私に隠していた。 になれば、私は何つらされないまま、着の着のままでに放りされるところだったのだ。
通話を切り、私はスマートフォンの画面を見つめたまま、しばらくけなかった。 りすら湧いてこなかった。 ただただ、背筋が凍るような恐怖が、全を支配していた。
あの男は、最初から私を捨てるつもりだったのだ。 ローンの完済を偽装し、最まで私からを搾り取り、む所を失わせたところで放りす。 連れ添った妻に対して、がそこまで酷になれるものなのか。
そのの夕方、私は法務局で取得した証をに、自宅へ戻った。 義母はデイサービスから戻り、リビングで煎餅をかじっていた。 過ぎ、玄関のドアがき、夫が帰宅した。
「おい、飯は」
靴を脱ぎながら発した夫の第声に、私はリビングのドアを静かにけて対峙した。 には、あの登記事項証。
「彦さん。これを見て」
無言で差しされたを受け取り、夫は眉をひそめた。 そこに並ぶ「株式会社〇〇アセットパートナーズ」の文字を見た瞬、夫の顔からわずかにが引いた。
「……法務局へったのか」
「ええ。ったわ。
管理会社にも話した。で、この契約は終わりね。に退の通が届いていたこともっているわ」