"ローンを完済した私に、義母は「家なら売った」と言った" 第2話
テーブルのの万円の受領証。 唸り続けている蔵庫。 そして、数に届いた夫からのメッセージ。 『今で最だからな。万、忘れずに振り込んでおけよ』
あれは、体何だったのか。 ので警報が鳴り響く、私は玄関の鍵がく音を聞いた。
いビジネスバッグを引きずるようにして、夫の彦がリビングに入ってきたのは、それから数のことだった。
物流企業の管理職。数字に細かく、いつも眉に皺を寄せている男。 夫はネクタイを緩めながら、テーブルのに置きっぱなしになっていた振込受領証に目を留めた。
「ああ、振り込んだか。ご苦労」
あまりにも平然としたその調に、私の喉が引きつった。
「彦さん」
「なんだよ、疲れてるんだ。飯ならくしてくれ」
「お義母さんが……このはもう売れたって。から、ここはのだって仰ったの」
夫のネクタイを解くが、ピタリと止まった。 ほんの瞬、探るような線が私の顔を掠めた。 けれど、慌てる様子も、揺する素振りもない。 ただ「余計なことをられた」という苛ちだけが、その濁った瞳に浮かんでいた。
「……母さん、余計なことをったな」
「本当なの……? この、本当に売ったの?」
私の声は、自分でも驚くほど震えていた。 夫はくため息をつくと、ソファにどっかりと腰を沈めた。
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「売ったよ。リースバックっていう仕組みだ。産にを買い取ってもらって、そのまま賃を払ってみ続ける契約だ。世じゃ珍しくもない」
「リース……バック?」
「そうだ。だから俺たちはから何つ変わらず、ここにめてるだろうが。何か困ったことでもあったか? 所にもられず、今まで通りの活を続けてる。騒ぎするようなことじゃない」
「何つ変わってない!?」
耐えきれず、叫び声がからびしていた。
「私は! 、毎万円を払ってきたのよ! 今も! あなたが最だから忘れずに振り込めって言ったから、最の万円を払ったのよ! に売ったなら……ローンの返済なんて、とっくに終わってたんじゃないの!?」
夫は忌々しそうに舌打ちをした。 腕を組み、私を虫けらでも見るようなたい目で見ろしてくる。
「万は、賃の部として充当してたんだよ。を借りてんでるんだから、賃料が発するのは当たりだろう。おが今まで通り活費として払うのは当然の義務だ」
「賃の部……?」
「そうだ。売却したで残りのローンも綺麗に片付いた。おはただ、む所を確保するための費用を分担してただけだ。何を被害者面してるんだ」
言葉がなかった。 、私が爪にをともすようにして守り続けてきたものは、何だったのか。
自分たちのを、自分たちので完済するという誇り。 そのためにも買わず、化粧品も切り詰め、壊れかけの蔵庫を使い続けてきた私の。 それはの点で、とっくに夫のによって売り払われ、私はただ、見らぬ誰かの物件に「賃」を払い続ける同居に成りがっていたのだ。
「……売ったおは、どこへったの?」
震える唇を噛み締めながら、私は尋ねた。 夫は線をそらし、面倒くさそうにちがった。
「そんなもの、残債の処理やら諸々の支払いで残っちゃいないよ。詮索するな。言っておくがな、このの名義は最初から俺だ。おがいくらを挟んだところで、法には何の関係もないんだよ」
夫はそのまま寝へと消えていった。 バタン、と乱暴に閉ざされたドアの音が、の奥でいつまでも鳴り響いていた。
眠れない夜がけた。 リビングの窓から射し込む朝のが、ひどく々しい。 キッチンにつと、蔵庫がまたカタカタとな音をてていた。 その音を聞くだけで、胃が痙攣するように痛む。
私はパート先に話をかけ、体調良を理由に休暇を取った。 、邪を引いても休まなかった私が、初めて使っただった。
向かった先は、さいたま方法務局の張所だ。 役所のたい空気と、類をめくる無質な音。
タッチパネルで申請を作成し、数百円の数料を支払って、窓から枚の類を受け取った。