"十二年育てた姪に「人生を奪われた」と告発された" 第6話
母はいため息をつき、カウンターの子に腰をろした。 苛ちを隠すように、細い指先でこめかみを押さえる。
「あのね、結。現実を見なさい」 たい声だった。 川越の叔母がを爆発させて鳴るの声とは違う。 のを切り捨てるの、平坦で乾いた声。
「当の相のは、初婚だったの。向こうのご両親は厳格な柄で、私が婚歴があることすら、やっとのいで納得してもらったのよ。そこに『の夫との子どもがいます、緒に暮らします』なんて言ったら、あの結婚自体が破談になってたわ」
「破談になったら、何がいけなかったの?」
「私の活よ!」 母が声を荒げた。 サロンで見せる優雅な態度は、微も残っていなかった。
「あの結婚で経済な基盤を作らなければ、あなたへの仕送りだって続けられなかった! 京で賃を払って、あなたに毎何万円も送るために、私なりに必だったのよ! に籍を入れず、川越に預けておくのが、番全な選択だったの!」
に。 全な選択。
母のからる言葉は、どれももっともらしく聞こえた。 でも、私の喉の奥には、鉛のような塊が居座っていた。
「……じゃあ、歳の休みのは?」 私の声が、震えた。 「叔母さんが私のLINEを使って勝に断ったって、この言ってたよね。お母さんが部を用して、京の学に転させようとしてくれたのに、叔母さんが邪魔したって」
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「そうよ。あの子が嘘をついて、あなたを囲い込んだのよ」
「本当にお母さんは、私を引き取る気だったの?」 真っ直ぐに母を見た。 「再婚相のと、そのまだ婚してなかったよね? そのは、私が京に来ることを許してくれてたの?」
母の線が、泳いだ。 唇を噛み、爪の先を見つめる。 そのわずかな沈黙が、何よりも雄弁に答えを告げていた。
「……あのは、子どもが嫌いだったわ」 母は絞りすように言った。 「でも、庭内別居状態だったから。空き部があったから、あなたを呼んでも問題ないはずだったのよ」
問題ないはずだった。 確証なんて、どこにもなかったのだ。 母は、崩れかけの結婚活ので、自分の拠り所として私を呼び寄せようとしただけ。 そして、叔母から届いたあの拒絶のLINE本で、あっさりと引きがり、度と確認の話すら寄こさなかった。
母は私を奪われたのではない。 放すための都のいい理由を、叔母の拒絶のに見つけて、堵していたのだ。
が痛かった。 信じていたが、音をてて崩れていく。 叔母が私を縛り付けていた鎖なら、母が差し伸べていたは、ただのだった。
そのの夕方、母は「ちょっとかけてくる」と言い残し、青のマンションをてった。 き先は言わなかった。 だが、玄関のドアが閉まる直、母のコートのポケットから、川越きの武線の線図が覗いていたのを、私は見逃さなかった。
母が戻ってきたのは、夜のを回った頃だった。 リビングのドアが乱暴にく。 アルコールの匂いと、たい夜の匂い。 母はハイヒールを脱ぎ散らかし、持っていた革のトートバッグをソファのに投げした。
バッグのから、くしゃくしゃに丸められたがこぼれ落ちる。 に転がったそのに、私の線が吸い寄せられた。
A4のいコピー用。 部に印刷された文字。 『(案)』
拾いげようとした私のを、母が激しく払いのけた。
「見なくていいわよ、そんなもの!」 母の顔は、りで潮していた。 額に青筋が浮いている。
「あの子、本当に狂ってるわ。がおかしいのよ!」
に落ちたの隙から、もうつのものが覗いていた。 緑のチェックライターで印字された、埼玉りそなの切。 額の欄に、鮮に印字された数字。 『¥1,200,000-』
真んから、力任せに真っつに引き裂かれていた。
「……これ、何?」
「切れよ!」 母が吐き捨てるように叫んだ。 「あのThreadsの投稿のせいで、私のサロンにまで探りを入れてくる奴がてきたのよ。実の妹と揉めてるなんて噂がったら、私の顧客管理の仕事に傷がつくでしょうが! だから、あの子に百万払って、今までの養育の礼ってことにして、すべて円満なだったって類にサインさせようとしたのよ!」