"十二年育てた姪に「人生を奪われた」と告発された" 第4話
「結、それは――」
「を隠したのも、LINEを勝に送ったのも、私のじゃない」 結の目が、赤く滲んでいく。 けれど、涙はこぼれなかった。 歯をいしばって、私を睨みつけている。
「私のなのに。どうして、おばさんが勝に決めるの?」
返せる言葉が、何つなかった。 喉が塞がれ、呼吸の音だけが自分のに響く。 テーブルののが、私の犯した取り返しのつかない罪の形をして、そこに転がっていた。
結は、元に置いていた袋から、何かを取りした。 紺の、保温能がついたさな弁当袋。 先、私が引っ越しの荷物に無理やり詰め込んだものだった。
「これ、返すね」 結はそれを、無造作にテーブルのに押しした。 チャックの隙から、見慣れたチェック柄の布が覗いている。
「もう、お弁当作ってもらうこともないから」
「結……」
結はスマートフォンを取りし、画面をタップした。 私のアカウントの画面。 通話能のボタンが、目ので「拒否」に切り替えられる。
「用があるなら、メッセージだけにして。声、聞きたくない」
ちがったあの子の背は、もう川越の駅の改札で見送っていた子どもの背ではなかった。 伝票を掴み、レジへと歩いていく取りには、迷いがなかった。
テーブルのには、めきったアメリカンコーヒーと、未封の。
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そして、突き返された弁当袋だけが残されていた。
私はけなかった。 正しさも、注いできたも、の歳も、何ひとつ私を救ってはくれなかった。 ただ、元のスマートフォンが、たく指先を拒絶している覚だけが、皮膚の奥くまで染み込んでいた。
川越の古い造宅をて、表参駅から徒歩分のデザイナーズマンションに移りんだの夜。 広すぎるリビングのソファにく沈み込みながら、井の接照を見げていた。
限がない。 夜のを過ぎても、誰も「お呂沸いたよ」と声をかけてこない。 翌朝の朝のメニューも、着ていくも、指定されない。 机のに、アレルギーの薬が並べられていることもない。
自由だった。 、息を詰まらせて暮らしていたあの窮屈な箱から、ようやく脱できたのだとった。
「結、お肌乾燥してるじゃない。これ使って」 母は、座のサロンで扱っている級な美容液の瓶を、惜しげもなく鏡台に置いた。 本で万円くするガラス瓶。 川越の叔母なら、「ドラッグストアのハトムギ化粧で分」と顔をしかめるような品。
母は、私の髪を優しく撫でた。 「これからは、なんてしなくていいの。今まであの子のせいで奪われてきた、全部取り戻しましょう」
その言葉を聞くたび、胸の奥がじんわりと温かくなった。
母は、私をしている。 ずっとしていてくれたのに、川越の叔母がに入って、を隠し、嘘をついて、引きしていた。 そう信じていた。 あのThreadsの投稿をしたのも、母の涙を見たからだった。 「あなたの卒業アルバムすら、送ってもらえなかった」と、母が泣いた夜。 指を震わせながら、スマートフォンの画面に叔母へのりを打ち込んだ。
あの投稿は、母と私の正義だとっていた。
「結、ちょっとこれ見てくれる?」 休の午、母がアイランドキッチンのカウンターにタブレットを置いた。 画面には、あるウェブメディアの企画が表示されていた。
代から代の女性をターゲットにした、ライフスタイル系の報サイト。 太字のタイトルが、目にび込んできた。
『の空を越えて――引き裂かれた母娘が取り戻した、本当の絆』
「これ、何……?」 喉の奥が、かすかに引きつる。
「私のりいのライターさんがね、私たちの話を聞いて、ぜひ記事にしたいって言ってくれたの。読者からの反響もすごいとうわ。結のThreads、何千件も拡散されてるでしょう? 世のには、同じように親族に子どもを奪われて苦しんでる母親がたくさんいるのよ」
母は、陶器のようない指で画面をスクロールした。 構成案の欄。 インタビューの流れが、几帳面なフォントで並んでいる。
・実母の経済自と、引き取りの準備 ・親族による面会拒絶、連絡遮断の現実 ・歳、成を迎えて果たされた奇跡の再会