"十二年育てた姪に「人生を奪われた」と告発された" 第1話
スマートフォンの画面が、机ので激しく震えた。
川越の古い印刷会社。昼休みの事務所で、納品の束を揃えていた指が止まる。 何気なくいたThreadsのおすすめ欄。 タイムラインの最部に、見慣れたろ姿のアイコンが浮きがっていた。
「、実の親と引きされて育てられました。おばにを奪われていたことを、今さらりました」
喉の奥が、からからに乾いた。 臓が肋骨の裏側を乱暴に殴りつける。 結のアカウントだった。 先、歳になってを卒業し、京の学へ通うために川越のをてったばかりの、あの子の言葉。
添付された写真に、血の気が引く。 底が潰れかけたさな段ボール箱。 赤いリボンを巻いたままくすんだぬいぐるみと、端が焼けした文庫本。 箱の側面に貼られた「受取拒絶」の赤いゴム印。 跡に見覚えがあった。 ……に、押し入れの奥へ仕い込んだはずの荷物。
「毎届くはずのもプレゼントも、全部このに捨てられていました。『お母さんは忙しいから来られない』って、ずっと嘘をつかれていました」
文字を追う指先がたく張る。 ……嘘? 嘘って、何? 画面をスクロールするが止まらない。 すでに数百件のいいねと、見らぬアカウントからのコメントがぶらがっていた。
『毒親ならぬ毒おば、怖すぎる』 『子どものを自分の寂しさで搾取したんだね』 『実のお母さん、どれだけ悔しかっただろう』
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吐き気がこみげた。 その直、画面の部から別の通が崩のように滑り込んでくる。 埼玉の従姉妹から。 の役員仲だった所の母親から。
『紗さん、これ結ちゃんの投稿だよね?』 『丈夫? あの子、何言ってるの?』
画面の向こうから、無数の目が私を取り囲んでいるようだった。 息がうまく吸えない。
ヶ、の終わりの朝をいす。 玄関に並んだつのスーツケース。 「結、これ持っていきなさい」 渡そうとした保温の弁当箱と、常備薬のパウチ。 児喘息の発作止め、季節の変わり目にむ抗アレルギー剤。 の乗り換え案内を印刷した。 歳になっても、あの子はの乗り換えが苦だった。 全部、私が調べて、蛍ペンで線を引いておいた。
「もういいよ」 結は、私の元すら見ずに言った。 「だよ。私、もうなんだから。全部自分でできる」
あんなにたい目を向けられたのは、で初めてだった。 京の姉のマンションへくのだから、浮かれているだけだとっていた。 実の母親と暮らせるのだから、し気が張っているだけだと。
でも、違った。 あの子は、あのからずっと、この言葉を胸の底で研いでいたのだ。
震えるで、結のアカウントにダイレクトメッセージを送ろうとした。 だが、そのに画面が切り替わった。
結からの、たったのメッセージ。
『歳の休みのこと、覚えてる?』
奥歯が鳴る。
『お母さんが「京で緒に暮らそう」って言ってきたとき、私が断ったって言ってたよね。……あれ、本当に私が送ったLINEだとってるの?』
スマートフォンのたいガラスが、指先を刺すようにえていた。 私は、画面を伏せることすらできなかった。
武線にび乗り、池袋を経由して表参へ向かった。 窓ガラスに映る自分の顔は、化粧も直していない印刷会社の事務員そのものだった。 歳。独。 、あの子の朝ごはんと部活の征費と学の者面談だけで埋め尽くされてきた私のが、汚れた窓に張り付いていた。
「急に呼びして、何なの?」 駅くのオープンカフェ。 現れた姉、瀬玲子は、歳とはえないほど洗練されたスーツを着ていた。 座の美容皮膚科で顧客管理をしている姉は、川越の埃っぽい匂いなどとうに脱ぎ捨てている。
「結のThreads、見た?」 喉から絞りした私の声に、姉はアイスティーのグラスを指先で弄びながら、さくを鳴らした。
「見たわよ。あの子、本当に苦しんできたのね。あなたに言えなかった本音を、やっと吐きせたんでしょう」
「……本音?」 テーブルののナプキンを、無識に握りつぶしていた。 「私がいつ、結に母親の悪を吹き込んだ? をした夜にえピタを買いにったのも、指導でをげたのも全部私よ。