"「明日から母をやめます」結婚前夜、席次表を消した私" 第16話
相の顔を伺い、踏み込みすぎたを繰り寄せる。 その成が、たまらなくおしかった。
私はバッグの持ちをえ、悪戯っぽく笑いながら首を横に振った。
「今週末は駄目なの」
「え?」
「友達とで、沢へ泊の温泉旅にく約束をしてるのよ。幹線のチケットも、もう取っちゃったから」
奈央は瞬、きょとんと目を丸くした。
かつての奈央なら、「私の退院祝いより友達との旅を優先するの!?」と激していただろう。 自分のい通りにならない母親を、許せなかったはずだ。
けれど。
奈央は数秒のを置いた、ふっと肩の力を抜き、今番の自然な笑顔を咲かせた。
「そっか……沢、いいね。寒そうだから、あったかい格好してってね」
「ええ、ありがとう」
「お母さん」
病のドアノブにをかけた私を、奈央が呼び止めた。
「楽しんできてね」
「うん。ってくるわ」
病のドアが、静かに閉まった。
廊を歩く私の音は、驚くほど軽だった。 窓のには、ひとつない、澄み切ったの青空が広がっていた。
誰かのための犠牲ではなく。 誰かを縛るための義務でもなく。
私は私のをき、娘は娘のを背負っていく。
代半ば。 遅すぎるやり直しなんて、どこにもない。
胸いっぱいにのたい空気を吸い込みながら、私は幹線の刻表を確認するために、スマートフォンの画面をタップした。