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"「明日から母をやめます」結婚前夜、席次表を消した私" 第14話

窓に類を提し、受領印が押される。

「はい、森本様。婚届、たしかに受理いたしました」

窓の職員の事務な声が、の々に、静かに幕をろした。

区役所の玄関をると、のたいが吹き抜けた。

俊彦は、度も私の方を振り返らず、背を丸めて駅の方へと歩いていった。 そのさなろ姿を見送りながら、私はく息を吸い込んだ。

憎しみは、もうどこにもなかった。 ただ、い甲冑を枚ずつ脱ぎ捨てて、ようやく自分の肌でをじられたような、途方もない軽やかさだけがあった。

季節はへと移り変わり、にイルミネーションが灯り始めたの初旬。

私の活は、劇ではないけれど、確かな応えに満ちていた。 清掃のパートのに、週に、所ので伝いを始めた。 を揚げし、とりどりの枝をえる作業は、荒れていた私のを穏やかに満たしてくれた。

そんなある夜のことだった。

夜。 枕元に置いたスマートフォンが、微かな振をてた。

画面を覗き込むと、着信画面がっていた。 発信元は「奈央」。

胸がさくざわついた。 予定は、けのはずだった。

指を伸ばしかけたが、画面の表示がプツリと切れた。 ワンコールで切られたのだ。

計を見つめながら、私はベッドのでじっと待った。

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折り返すべきか、それとも待つべきか。

分、LINEの通音がく鳴った。

画面をく。 そこには、くえられたメッセージが届いていた。

『お母さん、夜にごめんね。 さっき、しめの陣痛が来て、今から病院に向かいます。 話押しちゃったけど、すぐ切りました。 陣痛が痛くて怖くて……気付いたら、番最初にお母さんの番号を押してました。 でも、またお母さんに甘えようとしてるって気付いて、切りました。 亮介さんとで、頑張って産んできます。 お母さんは、寝ていてください』

画面を見つめたまま、私の目から、すっと涙がこぼれ落ちた。

痛くて、怖くて、誰かにすがりつきたい極限の瞬に。 あの子は、の「甘えの連鎖」を、自分の指で断ち切ったのだ。

私は画面に指をらせた。

『奈央。 病院の先と助産師さんを信じなさい。 亮介さんのを、痛いくらいく握っていなさい。 呼吸を忘れないで。 あなたなら、絶対に丈夫。 無事にまれてくるのを、静かに祈っています』

送信ボタンを押すと、すぐに「既読」がついた。 それきり、返信は来なかった。

私はその夜、眠れなかった。 けれど、部のかりを消し、たいの空を見げながら、ただ静かにそのを待った。 駆けつけたりはしない。 それは、あの子が母親になるための、聖なる孤独な戦いだったから。

翌の午。 での仕事を終え、エプロンを畳んでいただった。

スマートフォンが震えた。 届いていたのは、枚の写真だった。

産着に包まれた、真っ赤な顔をしたさな赤ちゃん。 その横で、疲れ果て、髪を振り乱しながらも、穏やかに微笑んでいる奈央の顔。

写真のには、こうかれていた。

『お昼の分に、千百グラムの女の子がまれました。 難産で、ちょっとが折れそうだったけど……亮介さんと乗り越えられました。 お母さん、私、お母さんになりました。 もし……もし気が向いたらでいいから、顔を見に来てくれたら嬉しいです。 いつでもいいの。 お母さんの予定が空いているに。 もう、勝にを決めたりしないから』

私は、作業台のに置いた鋏を置き、スマートフォンの画面を指先でそっと撫でた。

「……おめでとう」

声にして、呟いた。

私はそののうちには病院へかなかった。 あらかじめ予約していた、に度のフラワーアレンジメントの教へき、自分のためのを丁寧に過ごした。 かつての私なら、全てを放りして病院へ駆けつけていただろう。 けれど、もう自分を削って差しす関係には戻らない。

翌の午、私はデパートのベビー売りで、肌触りの良いオーガニックコットンのブランケットをつ選んだ。

派すぎない、淡いアイボリーの布。

に乗り、都内の総病院の産科病棟へと向かった。

ナースステーションで面会の続きを済ませ、病のドアを軽くノックする。

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