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"「明日から母をやめます」結婚前夜、席次表を消した私" 第13話

「亮介くん……! 君まで、義理の父親に向かって――」

「恥を、ねるんじゃないよ」

く、枯れた声が割って入った。

子に乗った義母・だった。 義母は膝のの毛布を握りしめ、え切った目で実の息子を見げていた。

「もう誰もおの嘘には付きわんよ、俊彦。……見苦しい」

親族の誰も、俊彦を庇おうとする者はいなかった。 かつて森本の絶対な男として君臨していた男の元は、完全に瓦解していた。

俊彦は真っ赤な顔をしてちがり、履き物もそこそこに広をびしていった。 い引き戸が乱暴に閉まる音が、く玄関から響いてきた。

静まり返った広の、奈央のしゃくりあげる声だけが落ちていた。

奈央は、亮介さんの腕ので顔をげ、涙に濡れた瞳で私を見た。 その目には、すがるようなが宿っていた。

父親の嘘を暴いた。 父親に反逆した。 だから、お母さんは私を許してくれるはず。 抱きしめて、「よく言ったわね」と涙を流してくれるはず。

そんな甘えが、痛いほど透けて見えていた。

私は、座布団からちがった。 膝の埃を静かに払い、奈央のへと歩み寄った。

奈央が息を呑み、胸ので両を握りしめる。

私は娘を見ろした。 りも、も、その瞳には映さないようにして。

「……奈央」

「お母さん……私……」

「あなたが今、お父さんにったのはね」

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私の静かな声が、娘の期待をゆっくりと切り裂いていく。

「私の痛みを理解したからじゃないわ」

奈央の息が止まった。

「お父さんが、今度はあなたのを勝に仕切り始めたからよ。自分がコントロールされる側に回って、初めてっただけ」

「え……」

「あの結婚式の。父親にそそのかされたとしても、マイクを握って私を指差したのは、あなた自の志よ。誓約を拒絶した私を責めてたのも、あなた自よ」

奈央の瞳から、すがるようなが消え、茫然とした絶望が広がっていく。

「自分の都が悪くなると誰かのせいにして、誰かを悪者に仕てげて自分を正当化する。……あなたは今、お父さんとまったく同じを歩いているのよ」

「お母、さん……」

「そのことに、いつか自分でちゃんと気づきなさい。……お父さんのせいにするのをやめた、初めてあなたの本当のが始まるの」

私はそれ以、何も言わなかった。 広の正面にある仏壇に向かって、静かに礼した。

親戚たちにも軽く会釈をし、バッグをに取って歩きす。

背から、奈央の泣き叫ぶ声は聞こえなかった。 ただ、静かにに涙を落とす気配だけが、たい畳のに残されていた。

それから週。 庭裁判所の調を経て、私たちは区役所の民課にいた。

テーブルのに置かれた、枚の。

緑の枠線で囲まれた、「協議婚届」。

俊彦は、やつれ果てていた。 あの司然とした威圧はどこにもなく、無精髭が伸びた顎を引いて、線を落としていた。

義母の介護は、私がった、完全に破綻した。 俊彦がで世話をしきれるはずもなく、域包括支援センターが介入し、介護3への区分変更とショートステイの利用が決定していた。 毎かかる介護保険の自己負担分や施設の費用。 事代の請求。 これまで私が無償で、当たりのように引き受けていた現実のコストが、すべて俊彦の座から引き落とされるようになっていた。

「……これで、満か」

ペンを握る俊彦のが、微かに震えていた。

「満、という問題ではありません。お互いのを、本来あるべき所に戻すだけです」

「だぞ。おは……森本のに対して、何の未練もないのか」

「ありません」

私は迷いなく答えた。

「私は、あので誠誠尽くしました。義母のことも、奈央のことも、あなた自のことも。度もを抜いたことはありません。だからこそ、何の未練もありません」

俊彦は唇を噛み締め、署名欄に乱暴に自分の名をき殴った。 印鑑が、鈍い音をてて朱肉を吸い、に押し付けられる。

私も自分の名をき、文判を押した。

婚姻費用の精算、の共財産の分割、分割の続き。

すべて政士を通じて作成した公正証の通りに処理された。 私を無文で追いすつもりだった俊彦の目論見は、法律という徹な防波堤のに、何つ通用しなかった。

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