"「明日から母をやめます」結婚前夜、席次表を消した私" 第7話
医師の鋭い追及に、俊彦はをパクパクとかした。
「そ、それは……この妻が、急にを放棄して逃げしたからでして……普段は全部こいつが――」
「私はに別居しております」
私は医師に向かって、はっきりと告げた。
「夫には別居の申入も送付済みです。同居している実の息子である俊彦さんが、保護義務者です。私はもう、こののではありません」
「お……!」
俊彦の顔が、りと屈辱で気に変わっていく。 その、病の入に、もうつのが現れた。
ブランド物のバッグを抱え、息を切らせた奈央だった。
「お父さん! おばあちゃん、丈夫なの!?」
駆け寄ってきた奈央は、私を見るなり、結婚式の夜と同じ敵に満ちた目を向けた。
「……何しに来たの? お母さん。関係ないって言ったくせに、今さら配してるフリ?」
「奈央。あなた、おばあちゃんの様子を見に実へ寄ったことはあったの?」
私の問いに、奈央は怯むどころか、唇を尖らせて言い放った。
「寄れるわけないでしょ! 私、先週結婚したばかりだよ!? 亮介さんのご両親への挨拶回りや、居の片付けでぬほど忙しいの! それくらいお父さんがやるのが当たりじゃん!」
「でも、あなたはお父さんに言っていたわよね。『お母さんが居に来て事をしてくれるなら助かる』って。自分の面倒は見てほしいけれど、倒れそうな祖母の面倒を見る気は最初からなかったのね」
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「なっ……! 何よそれ! 私は実の孫だよ!? 介護なんて、嫁の仕事でしょ!?」
、歳だった奈央の顔が、瞬だけ脳裏をよぎった。 あの頃の面は、もうどこにもなかった。 自分の都と権利だけを主張し、の痛みには瞥もくれない、勝な。
「おい、奈央にそんなを利くんじゃない!」
俊彦が割って入った。
「佳代、いい加減にしろ。母さんがこうなった以、おがに戻って病するのが筋だ。親族のLINEでも、おの責任を問う声で溢れてるんだぞ。今戻ってくれば、式の件も問にしてやる。これが最のチャンスだ」
「最のチャンス」
その滑稽な言葉の響きに、私はわずたい笑いを漏らしてしまった。
「お断りします」
「……何だと?」
「お義母さんの介護が必なら、すぐに『域包括支援センター』へ相談にってください。介護認定の見直しを申請し、訪問介護やショートステイを利用してください。実の息子である、あなたの仕事です」
「介護保険だと!? にを払って母さんのの世話をさせる気か! 所にられたらどうする! 男の俺の恥になるだろうが!」
俊彦が叫んだ。
彼にとって、母親の命も健康もの次だったのだ。 「にを払うのが惜しい」「所にられて世体が傷つくのが嫌だ」。 だから、妻という名の無料の労働力に、密で全てを背負わせ続けたかった。
その傲な叫びが、処置に響き渡った、そのだった。
ベッドので、点滴の管をつけた義母が、ゆっくりと体を起こした。
「……お義母さん、横になっていてください」
私が駆け寄ろうとすると、義母は々しくを挙げて、それを制した。 そして、酸素マスクを自らのでした。
浅い呼吸のから、乾いた、けれど芯のある声が絞りされた。
「俊彦」
俊彦が、苛ちを隠さずに振り返る。 「なんだよ、母さん。今、佳代に話をつけてるんだから――」
「恥を、りなさい」
処置の空気が、瞬で凍りついた。
「え……?」
俊彦の言葉が途切れた。
義母の線は、私ではなく、真っ直ぐに実の息子と孫娘へと向けられていた。 その目は、かつて厳格だった昔の姿を取り戻したかのように、鋭くややかだった。
「聞こえなかったのかい。恥をりなさい、と言ったんだよ」
「な、何言ってんだよ母さん! 俺は母さんのために、この恩らずの女をに連れ戻そうと――」
「おは、自分の母親の薬の名もらんのか」
義母の声はく、処置のをうように響いた。
「、私がが割れそうだと訴えても、テレビを見ながら『寝てれば治る』と聞き流したのは誰だ。ゴミの分別もできず、台所を油まみれにして、夜遅くまでパチンコにっていたのは誰だ」
俊彦の顔から、みるみる血の気が引いていく。
「奈央もそうだ」
義母の線が、青ざめる孫娘へと移った。
「結婚式の画を親戚に見せびらかして、佳代さんを悪者にして……自分は度も私の様子を見に来ない。