"「明日から母をやめます」結婚前夜、席次表を消した私" 第6話
贅沢はできない。 けれど、で慎ましく暮らすなら、は持ちこたえられる。
「何もできない女」と決めつけて見し続けてくれたことが、皮肉にも、私の最の武器になっていた。
私が森本をて、が過ぎた。
その、私は清掃会社での週のパートを始め、夕方にはくのスーパーで特売の野菜を買う、静かで平穏な常をに入れつつあった。
夫の嫌な音に怯えて臓を縮こまらせることも、義母のナースコールの音にび起きることもない夜。 こんなにもく眠れたのは、で初めてだった。
だが、私がったあとの森本の現実は、そうはいかなかったらしい。
始まりは、本の話だった。 見らぬ固定話の番号。 画面には、域の総病院の名が表示されていた。
「森本佳代様のお話でしょうか。こちら、桜ヶ丘総病院の救急来です」
背筋に、たいものがった。
「あの……お義母さんが、何か?」
「はい。義理のお母様の様が、ご自宅の廊で倒れられ、先ほど救急搬送されてきました。現、識は回復されていますが、血圧が百を超えておりまして……ご族の方に連絡がつかず、保険証の控えにあった佳代様のお話にかけさせていただきました」
計を見ると、平の午。 俊彦はまだ会社にいるだった。
「夫や、娘には連絡がいかないのですか?」
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「ご主様の携帯は何度かけてもおにならず、娘様の居の番号も留守番話になっておりまして……」
受話器の向こうから、護師の困惑した声が伝わってくる。
私はさく息を吸い込んだ。
「……わかりました。病院へ向かいます。ですが、私は現夫と別居であり、今の元引受にはなれません。その点だけ、ご承おきください」
タクシーを拾い、病院へと急いだ。 急患用の処置のベッドには、点滴を打たれ、酸素マスクをつけた義母・が横たわっていた。
歳。 元々は厳格で、私に対しても言の絶えなかっただ。 だがここ数は腰が急速に衰え、物忘れも目つようになっていた。
ベッドの脇に置かれた義母のバッグから、処方箋とお薬帳が覗いていた。 私はそれをに取り、を確認した。
絶句した。
朝晩にむべき圧剤のヒートシールが、週分、つかずのまま残っていた。 血圧帳の記録も、私がをたから完全に途切れている。
「……佳代さん、かい」
マスクの奥から、掠れた声が漏れた。 義母が、濁った瞳をゆっくりとこちらに向けた。
「お義母さん。丈夫ですか。は痛みますか」
「薬が、どこにあるか……わからなくてねえ。俊彦に聞いても、『引きしのどこかにあるだろ、自分で探せ』って、鳴るばかりで……」
義母の骨ばった指が、頼りなげに私の袖を掴んだ。
そのが刻みに震えている。
「ご飯もね、スーパーの揚げ物ばかり机に放りされて……喉を通らないのよ。部のゴミも、溜まる方で……」
それが、私が抜け落ちた森本の「現実」だった。
俊彦は、母親の持病の薬の名すららなかったのだ。 病院への付き添いも、毎の塩分を控えた煮物も、デイサービスの送迎への引き渡しも。 すべて「にいる女が当たりにやるべき雑用」として、気にも留めていなかった。
ガラリと、処置のカーテンが乱暴にいた。
息を切らし、ネクタイを歪ませた俊彦がっていた。 その顔は、母親の否を気遣うではなく、あからさまな苛ちに染まっていた。
「おい、母さん! 何やってんだよ、平の真っ昼から! 会社に連絡が来て、どれだけ恥をかいたか分かってるのか!?」
番、鳴りつけた俊彦は、ベッドサイドにつ私に気づくと、目を剥いた。
「佳代……! お、どの面げてここに来た!」
「俊彦さん。声を落としてください。ここは処置です」
「うるさい! おがてったから、母さんが倒れたんだろうが! 殺しめ! 全部おの責任だ!」
俊彦は私の胸ぐらを掴まんばかりの勢いで詰め寄ってきた。 その声に、通りかかった医師と護師が眉をひそめて割って入る。
「ご族の方、院内でお静かに願います。お母様は血圧が極度に昇して倒れられたんです。
お薬の管理はどうなっていたんですか? 週も薬が断していた形跡がありますよ」