"夫が私を退職させた翌朝、会社は夫を呼び出した" 第13話
「おい、母さんの薬がもう切れるんだよ。かかりつけの病院の診察券、おが持っていっただろ。どこにあるんだよ」
「保険証も診察券も、リビングの話台の引きしに置いてきました。政士の方を通じて送った目録にもいてあります」
「あんな切れ、いちいち見てられるか!」
健は苛たしげにレジ袋を揺らした。
「母さんがで暴れてるんだよ! 腰が痛い、飯がい、由美を連れて戻れって、喚き散らしてるんだ! 俺が朝から晩まで段ボールの策でり回ってるに、で寄りのオムツまで替えられるわけねえだろ!」
「それは、あなたの母親です」
私は歩がり、健との距を保った。
「、私がで背負わされてきたことです。実の息子であるあなたが、自分で面倒を見るのは当たりでしょう」
「おは嫁だろうが!」
健が鳴り声をあげ、傘の柄を握り直した。 粒が、彼のの甲で弾けぶ。
「会社を潰す気かよ! ミツワ品からさっき、取引止の正式な通がファックスで届いたぞ! 資材の納品は全量キャンセル、違約の請求までチラつかされてるんだ! 俺の形はの昼に落ちるんだぞ! 百万円だ! どうすんだよこれ!」
「田島部と裏で組んで、正な発注を通そうとした報いです」
「俺は騙されたんだよ!」
健が唾をばしながら、私の肩を掴もうとを乗りしてきた。
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私は素くをかわす。健の元がふらつき、濡れたアスファルトに靴底が滑った。
「田島が……田島さんが言ったんだよ! 『おんとこの段ボールを使ってやるから、奥さんに退職願をさせろ』って! あいつが俺に、おのパソコンからメールを送れって指示したんだ!」
健は息を切らし、懇願するように両を擦りわせた。 その目には、かつて私を見し、支配していた傲な男の面はどこにもなかった。 ただ、自業自得の借に首を絞められ、藁をも掴むいでいつくばる、れなの姿だった。
「由美、頼む。やり直そう」
……は? 今、この男は何を言った?
「俺が悪かった。おのパソコンを勝に触ったのも、母さんのことを押し付けてたのも、全部謝る。だから……あの弁護士を取りげてくれ。別居をやめて、に帰ってきてくれ」
健の元が、醜く歪んだ。
「おがに戻って、『夫婦の悪ふざけでメールを送ってしまっただけだ』って本社に証言してくれれば、俺の正アクセスは問になる。田島に脅されてやったって、俺が本社の監査で証言してやるよ。田島を連れにしてやる。おだって、あいつを失脚させたいだろ?」
取引。 この男は、最の最まで、すべてを取引の具としか見ていない。
「俺が監査で全部喋ってやる。田島の指示だったって証拠もしてやる。
だから……その代わりに、婚はなしだ。俺の会社の形を落とすために、おの実の遺産座の凍結を解いて、百万だけ融通してくれ」
のる音が、のいていくような気がした。
胃の底から、たい笑いがこみげてくるのを止められなかった。
「……健さん」
私の声は、音よりも静かだった。
「もし、田島部が約束通り、あなたの会社に契約をくれていたら。百万円の段ボール代が、無事にあなたの座に振り込まれていたら。あなた、今ここに来て、同じことを言いましたか?」
健の言葉が、喉の奥で詰まった。 泳ぐ瞳が、灯の黄いを反射して濁っている。
「私の仕事が奪われようと、私が当に追いされようと、自分におさえ入れば、あなたは何わぬ顔で私を笑いものにしていたはずです」
「そ、それは……族のために……」
「族?」
私は鞄を抱き締め、たく言い放った。
「自分の保のために妻の首を差しし、に困ればその妻を脅迫の具に使う。それを族とは呼びません」
「由美……!」
「取引には応じません。あなたが田島部と何を共謀し、どんな罪を犯したのかは、会社と警察に話してください。私たちの婚姻関係は、もう破綻しています」
私は踵を返し、オートロックの操作盤に鍵を差し込んだ。
「待て! 由美! けろ! 俺を見捨てる気か! お、できていけるとってんのかよ! 誰が過ぎのババアを雇うんだよ!」