みかん小説
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"夫が私を退職させた翌朝、会社は夫を呼び出した" 第2話

私はすでに、をていた。

午ちょうど。 健のスマートフォンが、けたたましく着信音を鳴らした。

ディスプレイに表示された名は『ミツワ品・事部 神崎』。

健は靴を履き替え、得げにを鳴らしながら通話ボタンを押した。義母に聞こえるように、わざとスピーカーフォンに切り替える。

「あ、神崎部! 昨晩のメール、届きましたでしょうか。佐藤です。内の由美のことで……」

しかし、受話器の向こうから返ってきたのは、儀礼な労いの言葉ではなかった。

「……佐藤健様ですね」

く、押し殺したような、氷のように張り詰めた事部の声だった。

「奥様の退職願の件でお話いたしました。昨晩、ご自宅のアカウントから送信されたメールは確認しております。ですが――」

「ええ、もう退職の続きをめていただいて結構ですから! 制もこちらから郵送で……」

「佐藤さん、話を最まで聞いてください」

神崎のたいに、健のがピタリと止まった。

「本午、奥様ご本がこちらの総務部窓に直接社されました。そして、昨晩の退職メールはご自のではなく、配偶者による正な無断送信である旨の異議申が提されました」

健の顔から、さっと血の気が引いた。

「は……? い、いや、あれはあいつが自分から……」

「それだけではありません」

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神崎部の声は、さらに段くなった。

「奥様は社と同に、品質管理責任者としての緊急権限を使し、本に荷予定だった商品『熟成旨み醤油だれ』全ロットの荷止措置をシステムでロックされました。あわせて、の調達プロセスに関する内部異常報告が、私の元に提されております」

「し、荷止……? 調達プロセス……?」

健の唇が、刻みに震え始めた。

「報告には、しく採用された原材料の全確認の備。そして、今回の資材発注において、特定の業者に対する透な優先発注の疑いがあると記載されています」

話の向こうで、類がめくられる乾いた音がした。

「そこには、ご主であるあなたの会社――『佐藤パッケージング』のお名も記されています。ご主、これは体どういうことですか?」

受話器の向こうで、神崎が静かに息を吸い込む気配がした。

健は声を失い、喉を痙攣させてち尽くした。 から滑り落ちそうになるスマートフォンを、両で必に握りしめ直す。

昨夜、彼が私から奪ったつもりでいたものは、私の仕事ではなかった。 彼自が張り巡らせていた、浅はかで卑劣な罠の引きだったのだ。

その。午分。

私は、まだ朝がく差し込むミツワ品のをくぐっていた。 守の警備員が「おはようございます、佐藤主任。

いですね」と驚いたように声をかけてくる。

「おはようございます。し、確認したいことがありまして」

私はく会釈を返し、に品質管理へと向かった。 たいコンクリートの廊に、私の革靴のい音が響く。

には、昨夜印刷しておいた退職メールのコピーと、きでえた申。 そして、昨私がサインを拒否した『製造ロット検査承認』の控えがあった。

品質管理のドアをけると、換気扇のい唸り声と、塩素系消毒液の特の匂いがをついた。 を羽織り、髪をネットのに押し込む。 、毎朝欠かさず繰り返してきた作だった。

自分のデスクの引きしから、ずっしりとい製の印鑑を取りす。 【品質保証部 主任 佐藤】と刻印された、ただの角いゴム印と、私個の認印。

これを押すか押さないか。 その点に、スーパーの棚に並ぶ何万個という商品の全がかかっている。

私は端末をちげ、社内ネットワークにログインした。 パスワードを変更する。段階認証をスマートフォンに設定し、部からのアクセスを完全に遮断した。

画面に表示されたのは、本午にから搬される予定だった『熟成旨み醤油だれ』のステータス画面。

私はマウスを握り、躊躇なくカーソルをかした。

【荷ステータス:承認済(仮)】 ↓ 【荷ステータス:保留(HOLD)】

画面の央に、真っ赤な警告ポップアップが点滅する。

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