みかん小説
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"妻は毎晩八時、私を家から追い出す" 第21話

美智子はそれだけ言うと、由紀と誠に向かって々と礼した。 そして、私に背を向け、会議のドアノブへとをかけた。

「美智子! 待ってくれ!」 私が叫びながらちがった瞬、美智子は振り返らずに、たく言い放った。

「の、役に来なかったら……そので、庭裁判所に婚届調を申してるわ。度と、私のに現れないで」

バタン。 会議のい鉄の扉が閉まった。 私と、夫婦だけが取り残された部に、蛍灯のたいだけがり注いでいた。

品川駅の架を吹き抜けるビルは、昨夜よりも段とたかった。

午分。 雑居ビルの階にある公証役の待スペースには、すでに苦しい静寂が沈殿していた。

革張りの子に、美智子と、美智子の代理である神弁護士が座っている。 その向かいには、誠と由紀の姿があった。 誠は古びたスラックスのポケットにを突っ込んだまま、のタイル目をじっと見つめている。由紀は膝のでハンカチを固く丸め、度も顔をげようとしない。

私が入っていくと、神弁護士だけが軽く会釈をした。 美智子は私を瞥しただけで、線を正面の壁に掛けられた計板へと戻した。 黒いコートの襟元をきっちりとわせ、膝のに置かれた革バッグの持ちを握りしめている。

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その指先に、結婚指輪はもうなかった。

昨夜、私は藤原に話をかけた。 最にもう度だけ、緒に公証役へ来てくれと頼むつもりだった。 だが、藤原は私の声を聴いた瞬、荒い息を吐きながら鳴りつけた。 『勝にしろ! 俺を巻き込むな! あんたがでを被るってんなら、好きなだけ被りゃいいだろ!』 受話器は方に叩き切られた。

昔の私なら、逆して藤原の団へ乗り込んでいただろう。 あるいは、藤原の責任を証する証拠を探そうと奔したはずだ。 けれど、昨夜の私は、ツーツーと鳴る受話器を静かに置いただけだった。

藤原が来なくても、事実が変わるわけではない。 あの、壊れたプレスの稼働を命じたのは、現主任の藤原ではなく、経営者だった私自なのだから。

「修さんですね。どうぞ、第執務へ」

記官の女性に促され、私たちはちがった。 狭い執務の央には、みのある製デスク。 その奥に、髪を綺麗にえた老の公証が座っていた。

机のには、すでに何枚もの類が然と並べられていた。 神弁護士が昨から徹夜で文案を作成し、側の向を反映させて作成した『債務弁済契約公正証(案)』。

「それでは、内容の確認に入ります」

公証の乾いた、事務な声が内に響いた。 を交えないその声が、かえっての来事を刃物のように研ぎ澄ましていく。

「……甲、修は、平成に発した株式会社精密における労働災害事故に関し、全配慮義務に違反し、設備の異常を認識しながら稼働を継続させた過失責任を認める」

喉の奥がヒクリとねた。 公の記録として、私の名と、私の犯した罪が読みげられていく。

「……これにより乙、誠が被った遺障害に対し、当の示談に基づく残債務百万円、および義責任に基づく付として百万円、計百万円の支払義務があることを確認する。甲は、民法の消滅効の利益を切放棄し、本契約に定める員の支払いを怠ったときは、直ちに制執にする旨を承諾した」

制執認諾文言付きの公正証。 もし私が支払いを滞らせれば、裁判を経ることなく、私の与や個座は即座に差し押さえられる。

「また、本契約の成をもって、甲、乙、ならびに由紀のにおける本件事故に関する切の債権債務は清算されたものとし、以、相互に誹謗傷、私活への接触をわないことを確認する」

公証が類から顔をげた。 鏡の奥の鋭い線が、私に向けられる。

「修さん。記載内容に相違はありませんか。効を援用すれば、法には円も支払う義務がない能性がい契約です。

それでも、この内容で公正証を作成することに同しますね?」

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