"妻は毎晩八時、私を家から追い出す" 第7話
「当の残は百万だったはずだ。万乗せして百万ある。これで全額完済だ。領収をいてくれ。そして、もう度と美智子に会わないと約束してくれ」
由紀は、私の顔をじっと見つめていた。 その瞳の奥にあるが、りなのか軽蔑なのか、私には判別できなかった。
「……奥さんに内緒で、これを持ってきたんですか」 「当たりだろう! あいつに余計な配をかけたくないんだ。女同士で昔の話をほじくり返したって、何の得にもならない。誠さんの術費用が必なんだろう? これを持っていけ。全部解決する」
由紀は、ゆっくりと首を横に振った。 そして、え切った声で言った。
「さん。あなた、と何つ変わっていらっしゃらないんですね」
「何だと?」 「おを払えば、相のを塞げるとっている。あのもそうでした。夫のが使い物にならなくなった、あなたは病院の廊で、義父や私に『これで何とか収めてくれ』とをげた。でも、あなたが守りたかったのは私たちの活じゃなくて、自分のの評判と、械を止めなかった自分のプライドだけだった」
「私は経営者だったんだぞ! 会社を守る義務があった!」 「そのために、嘘をついたんですか? 械が壊れていたことを隠して、夫の注のせいにしたんですか?」
喉が詰まった。
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由紀の声は荒げていないのに、昼のに鋭く突き刺さる。
「私は、おが欲しくて奥さんに連絡したんじゃありません。奥さんからが届いたんです。『夫が過に何をしたのか、本当のことを教えてほしい』と」 「……美智子が?」
「奥さんは、ずっと苦しんでいらっしゃいましたよ。あなたが倒産の、どれだけ惨めないをして借を返してきたか、番くで見ていたから。でも、その苦しみが『誰かを踏み躙った報い』だったとしたら、自分はどうすればいいのかって」
由紀は、元のアスファルトを見つめながら、静かに息を吐いた。
「このおは受け取れません。もし受け取ったら、私はまた、あなたに夫の尊厳を売り渡すことになります。……お引き取りください」
由紀はゴミ袋を拾いげ、裏のい鉄の扉の向こうへ消えた。 ガチャリと鍵が閉まる音が、昼の宅に虚しく響いた。
元に残された、百万円の茶封筒。 いはずの札束が、まるで鉛のように私の腕を引っ張り、面へ引きずり込もうとしているようだった。
夕暮れ、私は逃げるように自宅へ向かった。 由紀にを突き返されたという屈辱と、美智子が自発に過を嗅ぎ回っていたという恐怖が、交互に私の胸を締め付ける。
嘘だと言わなければならない。 由紀が嘘をついているのだと、美智子を説得しなければならない。
まだにう。夫婦として積みげてきたがある。ポッとの過の霊なんかに、私たちの絆が壊されてたまるものか。
だが、自宅のに辿り着いた瞬、私のは凍りついた。
階建ての建売宅。 その玄関のに、見慣れない軽トラックがまっていた。 作業着を着た若い男が、荷台のロープを解いている。
そして、玄関のドアがいた。
からてきたのは、トレンチコートを着た美智子だった。 には、使っていた型のキャリーケースがつ。 その脇には、丁寧にガムテープで封をされた段ボール箱がつ、積まれていた。
「……美智子?」
私の掠れた声に、美智子が顔をげた。 化粧気のない顔。けれど、その瞳の奥には、今朝までの迷いや怯えは微も残っていなかった。 静かで、恐ろしいほど澄み切った決だけがそこにあった。
「何をしてるんだ……それ。何の荷物だ?」 駆け寄り、キャリーケースの持ちにをかけようとした。 だが、美智子はすっとを引き、私のを避けた。
「妹のに、荷物を送るの」 「は……? 妹の? 何を言ってるんだ、お」 「私、ここをてくわ」
ので、何かが音をてて千切れた。
「待て! 待ってくれ! さっき由紀のところへってきた! あいつが何を言ったからないが、全部嘘だ! あいつはを請るために——」 「ってるわよ」
美智子の乾いた言が、私の言葉を遮った。
「由紀さんから、さっき連絡があったわ。あなたが百万円の現を持って、職まで押しかけてきたって」