"妻は毎晩八時、私を家から追い出す" 第6話
警備員と清掃を掛け持ちして、腰を壊して、今じゃこのザマだ』
「藤原さん、なら……しなら融通できる。だから、美智子に余計なことを言うな。当のことは『自分たちも予見できなかった慮の事故だった』で通してくれ」
『断るね』
ピシャリと、藤原は言った。
『あんた、何も分かってないな。由紀さんがいたのは、のためじゃないぞ』 「……え?」 『誠さんがな、今のに臓の術をしたんだよ。もうくねえ。それであの夫婦、昔の類を理してたら、あの示談の残がてきたんだと。あの、あんたが踏み倒した百万円だ』
臓がねがる。百万。 確かに、当の示談として提示し、最初の百万だけ払ってを畳んだ、あの残額。
『由紀さんはな、が欲しいんじゃねえよ。「あの事故は仕方がなかった、さんも精杯やってくれた」って以自分に言い聞かせてきた誠さんに、あんたが本当は何をしたのか、ぬに真実を吐かせたいだけだ』
「そんなこと、今更言われてどうしろって言うんだ! 誠さんがったところで、誰も救われないだろう!」 『るかよ。俺を巻き込むな。もしあんたがこれ以俺の名をしたり、責任を擦り付けようとしたりしてみろ。俺は当の報のコピーと、あんたに提した修理見積をそのまま警察と労基、それに聞社にでも持ち込んでやるからな』
ガチャリと、方に通話が切られた。
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ツーツーという無質な子音が、受話器からに流れ込んでくる。 私は喫茶の席で、スマートフォンを握りしめたまま直していた。
藤原はかない。助けてくれない。 それどころか、歩違えれば、あの男が過の物証を世にばら撒く爆弾になる。 全の血液が逆流するような寒気がした。
会社へ向かうの、吊り革に掴まりながら、私はので激しく卓を叩いていた。 残、百万。 今の私の個座には、退職のために美智子に内緒で貯めていた裏座のが、約百万ある。 あれを渡せば。 利息分も含めて、百万の切か現をあの女のに積めば。
『これで全て終わりにしてくれ。度と私の妻にづかないといてくれ』 そう頼めば、あの貧相な女なら受け取るはずだ。 介護施設のパートで糊をしのぎ、病気の夫を抱えているなら、百万の現に抗えるはずがない。
で解決する。 それが番っ取りく、確実だ。 昔もそうやって解決しようとした。今回も、同じように蓋をすればいい。 私は自分の浅ましいいつきに堵し、の窓に映る自分の青ざめた顔を睨みつけた。
午、私は休暇を取り、由紀の職を突き止めるためにいた。 昔のの帳簿の所はあてにならなかったが、興信所を使うはない。
藤原が漏らした「介護施設」という言葉と、昨夜美智子が持っていた類の片隅にあった「品川区」の文字をがかりに、区内の社会福祉協議会と介護事業所のリストをスマートフォンの図で片っ端から照した。
幸運なことに、軒目の施設——古びた鉄筋コンクリートのデイサービスセンターの裏で、ゴミ袋を運んでいる由紀の姿を見つけた。
褪せた青いエプロンを着て、髪をろで束ねている。 その細い腕が、業務用のいゴミ袋を持ちげるたびにプルプルと震えていた。
「さん」
物から声をかけると、由紀は驚いたように体を張らせ、ゴミ袋を取り落とした。 振り返った彼女の顔に、確な警戒と嫌悪がる。
「……さん。どうしてここが」 「話がある。美智子には内緒で来た」
私はスーツの内ポケットから、でろしてきたばかりの帯封のついた百万円の札束つ——百万円が入ったい茶封筒を取りし、引に由紀の胸元へ押し付けた。
由紀は反射にそれを受け止めたが、封筒のみと隙から見えた万札の束に気づいた瞬、まるで焼けた鉄板でも触ったかのようにを引っ込めた。 バサリと、封筒がアスファルトの面に落ちる。
「……何の真似ですか、これ」 「利息だ」 私はで捲してた。周囲の目を気にしながら、落ちた封筒を拾いげ、もう度差しす。