"「母を助けないで」腎臓提供の前日、十五歳の甥は私に縋った" 第15話
「ヶ、度正式に取りげの続きをされています。あののご判断は、極めて正当なものでした」 医師は元のカルテに目を落としながら、静かに問いかけてきた。 「妹さんへのりや、甥御さんへの責任からではなく、あなた自の自由な志による申しですか?」
「はい」 私の声には、何の迷いもなかった。
「以の私は、妹のれな姿に脅迫され、自分のごと差しそうとしていました。それは違っていたといます」 指先を組み、テーブルのに置いた。 「今、妹には政の支援があり、透析できるが確されています。拓も自分のを歩み始めました。私が臓器を提供しなくても、誰もなないし、誰も破滅しません」
医師は静かに頷き、先を促した。
「それでも、提供しようとった理由は?」
「妹のためではありません。私の志だからです」 喉の奥から、乾いた、けれどみのある言葉を紡ぎした。 「あの子に健康なを与えたい。それだけです。そののあの子のがどうなろうと、私には責任がありませんし、あの子も私に依することは許しません。ただ、私が持っているつの腎臓のうち、つを渡す。それ以でも、それ以でもありません」
医師はい沈黙の、鏡の奥の目を細め、さく微笑んだ。
「素らしい覚悟です。これほど自したドナーの決断にち会えることは、滅にありません」
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類が差しされた。 『体腎移植ドナー候補者再登録申請』。
私は万を握り、自分の名を躊躇なくき込んだ。
再登録の通が病院から届いた翌、妹から話があった。 半のあの狂乱した着信履歴ではなく、昼休みのに、たった度だけ鳴った着信だった。
指定された病院の面談に入ると、妹はすでにパイプ子に座っていた。
痩せていた。 だが、あの気で澱んでいた肌は、規則正しい透析と活管理のおかげか、以より血がって見えた。 膝のに置かれた両は、爪がく切り揃えられている。
私の姿を見るなり、妹はくをげた。
「……お姉ちゃん」 掠れた声だった。 「病院から聞いた。また、ドナーの検査を受けてくれたって」
私は向かいの席に座り、バッグを膝のに置いた。 「ええ。来、枠が取れたわ」
「断って」 妹のからたのは、予の言葉だった。
妹は顔をげないまま、唇をく噛みしめていた。 両の指が、シーツのようにくなるほど握りわされている。
「断ってよ……。私、あんな酷いこと言ったのよ? お姉ちゃんの実を奪おうとして、拓を直に押し付けようとして……最のよ。今さら、お姉ちゃんから臓器をもらう資格なんてない」
「資格?」
「そうよ!」 妹の瞳に、涙が滲んだ。 「私、このヶ、で暮らして……ヘルパーさんに叱られながら、自分で塩分量測って、ご飯作って……やっと分かったの。
私、ずっと病気のせいにして、甘えてた。お姉ちゃんにも、拓にも、全部押し付けて、周りを傷つけて……。今さらお姉ちゃんに痛いいをさせて腎臓を貰ったら、私、自分を許せなくなる」
妹は顔を覆い、肩を震わせた。
れみを誘うための嘘ではなかった。 自分の醜悪な過と、きりで向きわされただけが流す、本物の悔の涙だった。
私は妹のその姿を見つめながら、静かに息を吐いた。
「真理」
妹が、涙に濡れた顔をげた。
「勘違いしないで」 私の声は、ひどく平坦で、徹だった。 「私は、あなたを許したわけじゃないわ」
妹の息が止まった。
「あの覚を見たの吐き気も、拓が薬をもうとした夜の恐怖も、忘れない。私たちは仲良し姉妹に戻るわけじゃないし、昔のようにを取りって笑いうこともない」
私はを乗りし、妹の目を真っ直ぐに見据えた。
「私はあなたに、腎臓をつあげる。でも、私のは、秒たりともあなたにあげない」
妹の瞳が、きく見かれた。
「術の病はしない。退院の活も伝わない。あなたがまた自暴自棄になって事制限を破ろうが、誰かに騙されようが、私は助けにかないわ。……全部、あなたが自分で背負いなさい」
これが、私の提示した契約だった。 無償のでも、族の絆でもない。 自した同士の、絶対な境界線。