"「母を助けないで」腎臓提供の前日、十五歳の甥は私に縋った" 第14話
メールによれば、真理は週回の透析を欠かさず受け、訪問介護のを借りながら、で減塩料理を作る練習を始めているという。 拓とは、児童相談所の指導のもと、回の面会交流が始まったばかりだった。
曜の午。 リビングの窓をけ、柔らかい陽を取り込んでいただった。
ピンポーン。
控えめなインターホンの音が、静かなのに鳴り響いた。
聞の勧誘かとい、玄関のドアをけた。
そこにっていた物を見た瞬、私は息を呑んだ。
「……拓?」
そこには、見違えるような姿の甥がっていた。
ボサボサだった髪は元で綺麗に切り揃えられ、猫背だった背筋は真っ直ぐに伸びていた。 制の袖から覗く首には肉がつき、気だった頬には、相応の健康な赤みが差していた。 何より、あの怯えと絶望に澱んでいた瞳が、のを反射して澄んでいた。
「おばさん、こんにちは」 しくなった声で、拓は々とお辞儀をした。
「拓……どうしたの? 保護所からできるようになったの?」
「うん。来から、全寮制の業専に入学が決まったんだ。学費も寮費も、奨学で全部る学。今は、その準備の帰宅許をもらって……おばさんに、どうしても渡したいものがあって来たんだ」
拓はリュックサックをろし、から枚のつ折りにされたを取りした。
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かつて母親の血圧と塩分濃度を殴りきしていたあので、丁寧に、両で私に差ししてきた。
受け取ってくと、そこには拓の文字で、びっしりと話番号と連絡先がリスト化されていた。
『母さんの通院用福祉タクシー連絡先 域包括支援センター担当:佐藤様 訪問介護ステーション(・・) 透析クリニック夜緊急窓 専の寮の僕の部(緊急以は話)』
そして、そのには、太いマジックでこうかれていた。
『これからは、全部このたちがやってくれます。 母さんが倒れても、僕がる必はありません。 おばさんが仕事を休む必もありません』
文字を見つめる私の界が、じわりと滲んだ。
「おばさん」 拓は顔をげ、真っ直ぐに私の目を見た。 その表には、かつて私にすがりつき、「お母さんを助けないで」と泣き叫んでいた子供のは、どこにもなかった。
「僕、もうでお母さんを背負わないよ」
拓の声は、ののように澄んで、けれど絶対に揺るがないさを宿していた。
「お母さんには、お母さんのがあって、僕には僕のがあるって……保護所の先たちと話して、やっと分かったんだ。お母さんを助けるのは、僕の役目じゃなかった」
拓は息を吸い込み、そして、私の胸にく突き刺さる言葉をにした。
「だから……おばさんも、自分を代わりにしないで」
拓が置いていった連絡先のメモは、蔵庫の側面にマグネットで留めたまま、季節がつ巡った。
のたいがり、初のい差しが実の庭の陽を照らしていた。
その、妹からも拓からも、直接の連絡は度もなかった。 それでよかった。 区の担当者からに度送られてくる械なメールだけが、の状況を伝えていた。
妹は、週回の透析を欠かさず受け、区の配サービスを利用しながら、ヘルパーの指導のもとで減塩を自炊し始めていること。 拓は全寮制の学で寮活に馴染み、成績も持ち直して、休みのロボットコンテストに向けて部活に没していること。
共依という病な鎖を断ち切られたは、痛みに耐えながら、それぞれのでとうとしていた。
そして、私ののにも、つの静かな答えがりてきていた。
誰かにいられた義務でもない。 「な妹」に絆されたでもない。 もちろん、「良い姉」という世体を守るための自己犠牲でもない。
私はで、学病院の移植医療センターの扉を叩いた。
「佐藤由紀さん。本当に、よろしいのですね」
面談の丸テーブルを挟んで向かいうのは、回の移植チームとは別の、独した「ドナーアドボケイト(ドナー代弁者)」
の精神科医だった。 本の移植医療において、ドナー候補者が族からの形無形の圧力、あるいは罪悪から提供をいられていないかを厳密に審査するための第者面談。