"娘を救った担任に、娘が叫んだ「信じるな」" 第13話
結の泣き声が、突如として絶叫に変わった。
『先……! さんに会ってきたの……! ここに来るに、さんのにったの……!』
私の臓が、ねがった。 ……え? さんのに? 結は、紗奈ちゃんのところへくだけじゃなく、そのに——?
受話器の向こうで、円玉が何枚も落ちるジャラジャラという音が響く。 結の、魂が千切れるような慟哭がスピーカーを震わせた。
『さんに、全部話したの……! 紗奈ちゃんだけが悪かったんじゃない、私も緒にいたんだって……先が全部隠したんだって……座したの……!』
会議の全員が、息を止めていた。 藤原先は両でを塞ごうとして、そのを宙で泳がせていた。
結の最の言葉が、静寂を無惨に引き裂いた。
『そしたらね……さん、笑ったの。笑いながら、私に言ったの……「あんたが謝ったって、私の写真は消えない。私はあんたも、藤原先も、絶対に許さない」って……!』
ヒュッ、と結が息を呑む音。
『先……もう戻れないよ……。私、どこにもく所がないよ……。消えるしかないよ……先……ッ!』
ツーツーツー——。
無質な切断音が、いつまでも、いつまでも会議に響き渡っていた。
会議のを支配していたのは、号でも鳴でもなかった。
ただ、誰も息をしていないかのような、んだ静寂だった。
机のに置かれた型スピーカーから、械な子音がプツンと途絶える。
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それでも、受話器越しに響いた娘の最の叫びが、壁や井に染み付いて消えなかった。
『消えるしかないよ……先……ッ!』
その言葉が、密閉された部の空気をナイフのように切り裂いていた。
藤原先は、両を受話器を避けるように宙に浮かせたまま、微だにしなかった。 血の気の引いた唇が、刻みに痙攣している。 いつも徒や保護者を柔らかく包み込んでいた完璧な微笑みは、どこにもなかった。 ただ、剥きしになった保と、底れぬ恐怖が、その瞳の奥にへばりついていた。
「……藤原教諭」
教育委員会の指導主事が、類をめくる音をてずにをいた。 く、を完全に削ぎ落とした声だった。
「の午。徒が鹿沼から極限状態で助けを求めていた事実を、あなたは認識していた」
「そ、れは……」
藤原先の喉仏がした。掠れた声が、わずかに漏れる。
「……いたずらだと、いまして。以から、緒が定な徒でしたので……私個で何とか説得して連れ戻そうと……」
「徒の命体にな危が迫っている状況で、個で抱え込むことが何をするか、分からないはずがないでしょう」
弁護士の田先が、淡々と元の資料をテーブルに滑らせた。
「あなたは警察の捜査本部にこの話を秘匿した。結さんが発見されたのは翌の夕方、あなたが『からの報』として警察に通報した所です。
……つまり、あなたは自分が結さんをで回収し、半の改ざんを止めできるタイミングを待っていた。そうですね?」
「違います! 私はただ、学の混乱を——」
「もう結構です」
それまで沈黙を守っていたが、苦虫を噛み潰したような顔で遮った。 額に浮かんだ脂汗をハンカチで乱暴に拭い、藤原先から線を背ける。
組織の論理は、いつだって酷だ。 守るべき価値があるうちは「優秀な教員」として庇いてするが、公な記録と通信履歴というかぬ証拠を突きつけられた瞬、切り捨ての対象へと変わる。 半、紗奈ちゃんがそうされたように。
「教育委員会として、本件を事態として正式に再調査します」
指導主事が帳を閉じた。 パチンと乾いた音が、会議の終焉を告げた。
「半の徒指導記録における適切な誘導、および方事案におけるな隠蔽為。藤原教諭には、付で自宅待を命じます。第者委員会による聞き取り調査に応じていただきます」
藤原先は、子から崩れ落ちるようにして、両で顔を覆った。 泣き叫びもしなかった。 座もしなかった。 ただ、自分が築きげてきた「完璧な聖職者」のが、元から音をてて崩壊していくのを、指の隙から見つめているだけだった。
私は、その姿をややかに見つめていた。
勝った、というはどこにもなかった。