"娘を救った担任に、娘が叫んだ「信じるな」" 第3話
そこに入っていたのは、見覚えのない格のプリペイド式スマートフォンと、枚の無記名式Suicaだった。
スマートフォンの源ボタンを押しする。 だが、画面は真っ暗なまま、赤いバッテリー切れのアイコンが瞬点滅して消えた。 充器の端子は、今使われているものとは違う古いタイプで、にはない。
私は息を殺しながら、もうつの物証——プラスチックのSuicaを裏返した。 名の印字はない。駅の券売で現で買われたものだ。
元のスマートフォンを取りし、以インストールしていた残・履歴確認用のアプリをちげた。 スマートフォンの背面に、結の隠し持っていたSuicaを密着させる。
ピピッ。
い子音とともに、画面に過の利用履歴が緑のリストとなって浮かびがった。
スクロールする私の指が、ある点で凍りついた。
の付。 結が失踪した、まさにそのの朝。
午分。 自宅の最寄り駅で入。
午分。 した駅の名を見て、私は目を見いた。
「……鹿沼?」
それは、娘が警察に保護された隣などではなかった。 を回乗り継ぎ、県境を越えた先にある、栃県のの駅だった。
なぜ、そんなくへ? 結には、その方面に親戚もいなければ、旅でったことすらないはずだ。
履歴はさらに続いていた。
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そのの夕方、駅のコンビニで百円の決済。 翌、同じコンビニで百円の決済。 そして、失踪目の午、駅の公衆話の利用記録——。
娘は、誰かに無理やり連れられたのではなかった。 自分ので切符を買い、自分の志で、その見らぬ町へ向かっていたのだ。
なぜ? 何のために?
のを激しい混乱が渦巻く、ふと、半の記憶が脳裏をよぎった。
鹿沼。 鹿沼。 その名を、私は確かに度だけにしたことがあった。
半の、あの惨な事件のあと。 学をっていった、あの子の転先——。
「林……紗奈ちゃん?」
声が震えて漏れた。
林紗奈。 学からの結の幼馴染で、学に入ってからも毎のようにがに遊びに来ていた、るく懐っこい女。 だが半、学内で起きたある徒のプライベートな写真と誹謗傷の拡散事件で、主犯として名指しされ、学から激しいバッシングを受けて自主退学していった子だ。
あの、紗奈ちゃんの母親が泣きながらがにやってきて、 「祖母のいる栃の鹿沼に、娘を連れてを寄せます」 と、震える声でをげていた。
結は、紗奈ちゃんのところへっていたのか? あんな惨な別れ方をして、度と連絡を取るなと学から言われていた、あの紗奈ちゃんの元へ?
計を見る。
夜を回っていた。
の朝になれば、教がやってくる。 藤原先も来るだろう。 学は、結に「錯乱した子供の戯言」として幕を引かせ、藤原先を無傷の英雄として祭りげるつもりだ。
だが、娘は言ったのだ。 「あの先は、最初から全部ってた」と。
喉の奥がカラカラに渇いていた。 私はちがり、クローゼットから古いトレンチコートを引っ張りした。 寝のドアの隙から、結の部を見る。 ドアの向こうは、相変わらず沈黙に包まれていた。
私は玄関の鍵を静かに回し、夜の湿ったのへと踏みした。
夜の自を、私は取り憑かれたように軽自をらせた。
フロントガラスを叩くが、ヘッドライトのを乱反射して界を滲ませる。 ハンドルを握るのひらには、じっとりとたい汗が滲んでいた。
半の景が、ワイパーの反復にわせて嫌でも蘇る。
ある女子徒の、決してに見せてはならないプライベートな写真が、学のグループチャットに流した。 瞬くに拡散され、写真はネットの掲示板にまで晒された。 被害に遭った徒は学に来なくなり、保護者が警察に被害届をす騒ぎにまで発展した。
その、最初にその画像を拡散した「犯」として突き止められたのが、紗奈ちゃんだった。
紗奈ちゃんは泣きながら否定したという。 「私は最初のじゃない」「別のところから回ってきたのを見ただけ」と。 だが、その言い分を誰も信じなかった。