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"娘を救った担任に、娘が叫んだ「信じるな」" 第2話

「……結」

声をかけると、娘の肩がビクッとねた。 だが、顔はこちらを向かない。

自宅のマンションに着くまで、娘は度もをかなかった。 築の2LDK。だけで暮らしてきた狭い部の玄関ドアをけると、の留守のに淀んだ、埃っぽい空気がをついた。

娘は靴も揃えずに廊をがり、自分の部へ入ると、内側からカチャリと鍵をかけた。

「結! けなさい、結!」

ドアノブをガチャガチャと激しく揺らす。 返事はない。 ただ、部の奥から、押し殺したような嗚咽が漏れ聞こえてくるだけだった。

私はドアに額を押し当て、たい板の触に耐えながら、に崩れ落ちた。

……どういうことなの? 最初からっていたって、体何?

ポケットので、スマートフォンが執拗に震え始めた。 画面には「学(教)」の文字。

通話ボタンを押すと、教の神経質そうなが元に突き刺さった。

「さん! お宅の結さん、ご自宅に戻られましたか!? あんな騒ぎを起こして……の保護者の方々からも問いわせが殺到しているんですよ! 藤原先がどれだけを痛めていらっしゃるか!」

「申し訳ありません……娘が、まだ混乱していて……」

「混乱で済む話じゃありませんよ! 藤原先はご自の脈や休を削ってまで、結さんの捜索に協力してくださったんです! それをあんな、恩を仇で返すような真似をして……! 学の信用問題に関わるんです!」

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世体。 学のメンツ。 教の言葉の裏にある「余計な波をてるな」という圧力が、受話器越しにひしひしと伝わってくる。

「とにかく、改めてご庭に伺います。結さんには、藤原先への正式な謝罪のを設けていただきますからね」

方に通話が切られた。 の奥でツーツーと無質な子音が鳴り響く。

震える指でスマートフォンの画面を落とした直、今度はいメッセージの通が入った。

藤原先からだった。

『お母様、丈夫ですか? 結さんの発言は、方の極度のストレスによるな錯乱だといます。気に病まないでくださいね。結さんのを守るためにも、あまり詮索せず、今夜はゆっくり休ませてあげてください』

完璧な文面だった。 どこにしても恥ずかしくない、徒いの担任からの配慮。

だが、なぜだろう。 「あまり詮索せず」という言が、喉の奥に引っかかった骨のように、チリチリと胸を刺した。

娘は錯乱してあんなことを叫んだのか? いや、あのの結の目は、狂気ではなかった。 あれは、決定な事実をにして追い詰められたの、剥きしの絶望の目だった。

私はちがり、洗面所でたいを顔に叩きつけた。 鏡に映る自分の顔は気で、目のには黒々とした隈が張り付いている。

信じちゃダメ。 あの先は、最初から全部ってた。

娘の叫びが、の奥で何度もリフレインする。 私はリビングのかりを消し、静まり返った廊を忍びでんだ。 娘の部のドアのにち、を澄ます。

嗚咽は止まっていた。 規則正しい寝息すら聞こえない、気な静寂。

本当に、先が何かをしたのか? 結は、あの、誰に、どこへ連れられていたのか?

警察は「本のによるの能性がい」と結論づけ、事件性はないとして捜査を打ち切った。 発見された、結の所持品は、通学鞄と、池の切れたスマートフォン、わずか数百円の銭だけだった。 をどうやってき延びたのか、どこに寝泊まりしていたのか、警察の事聴取に対しても結は完全にを閉ざしていた。

……本当に、それだけだったのか?

私は吸い寄せられるように、玄関へと向かった。 たたきに脱ぎ捨てられた、だらけのスニーカー。 その横にある、結が普段使っている通学用のローファー。

私は膝をつき、靴箱の扉を静かにけた。

普段は滅にけない、最段の奥。 結が学の頃に使っていた靴の裏側に、さな違があった。

を伸ばし、指先を滑らせる。 カサリ、と固いプラスチックの触が指に触れた。

取りしたのは、埃をかぶった靴の空き箱だった。

をける。

私の臓が、ドクンとねがった。

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