"特上寿司と、消えた妻の半年" 第16話
元旦の朝、箱をけたよしえは、箸の先でずつ見をすると、わざとらしく眉をひそめた。
「まあ、どれもこれもがぼやけていていわねえ。やっぱり、で働いているような女には、伝統の付けなんて無理なのかしら」
そのの午、親戚へのの挨拶話ので、よしえはリビングにいる私に聞こえるような声でせせら笑っていた。
「そうなのよ〜。今は嫁に全部作らせてみたんだけど、全然にわなくてねえ。やっぱり育ちの悪いは困るわねえ」
その話の横で、公平は私の作った伊達巻を美そうに切れも連続でに運んでいた。
私は無言で、空いた鍋を洗った。
(来の正、私はもう、この腐りきった台所にはいない)
そううと、たいでかじかむ指先すら、よくじられた。
がけたの曜の午、いがけない形で、よしえ自の決定な秘密の扉がかれた。
リビングで洗濯物を畳んでいた私のもとへ、よしえが客から分い茶封筒を抱えてやってきたのだ。
「麻子さん、ちょっとこれ、確定申告の類の作り方を教えてちょうだい。あなた、経理なんだからこれくらい朝飯でしょう」
相変わらずの尊な命令調だった。
「まではね、あっちの産さんに紹介してもらった税理士さんに頼んでいたんだけど、報酬がくてバカバカしいのよ。
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内に経理のプロがいるんだから、タダでやってもらえばいいって気づいてね。……それと、このことは公平には絶対に内緒よ。あの子、余計な配ばかりするから」
私は平静を装いながら、「わかりました。パソコンで国税庁のサイトをいて作成しましょう」と答えた。
ノートパソコンを卓に置き、よしえを隣に座らせて類を受け取った。
公の源泉徴収票、命保険料控除の証、医療費の領収の束。ここまでは、般な齢者の申告類だった。
だが、封筒の底から最にてきた枚の収支内訳を目にした瞬、私のキータッチのが、ピタリと静止した。
よしえは私の線に気づき、慌てたようにでまくしてた。
「そ、それも緒に申告しなきゃいけないのよ! 税理士さんがそう言ってたの! あなたはいちいちを見ないで、数字を入れる所だけ教えればいいのよ!」
私は何も尋ねず、画面の入力欄を静かに指差した。
「……では、この産所得の欄に、その数字をそのまま打ち込んでください」
老鏡を先に乗せたよしえが、震える差し指でキーボードを叩いていく。
そこに打ち込まれたつの数字が、私の網膜に焼き付いた。
『産賃貸収入:額960,000円』
『賃貸始:令49』
令。
それは、よしえが「じゃ寂しくて眠れない」
と泣きついてがに転がり込んできてから、わずかヶのことだった。
そして、万円――額にして、きっかり万円の賃収入。
よしえは印刷された申告に自で署名し、満そうに封筒へしまうと、「助かったわ。公平には絶対に言うんじゃないわよ」とを押し、自へ戻っていった。
残されたリビングで、私は閉じたパソコンの板をじっと見つめていた。
あの郊の戸建ては、空きなどではなかったのだ。
よしえは同居が始まって半も経たないうちに、自宅をに賃貸として貸しし、毎万円もの労所得を懐に入れ続けていたのだ。
そして、その莫な収入を隠し持ったまま、「だけじゃ細い」と嘘をついて息子のに寄し、嫁の料で活費を賄わせ、その嫁の事を「バツ」と称して削り取っていたのだ。
すべてのパズルのピースが、音をてて完璧に噛みった。
だが、私はこの事実を、公平には言も漏らさなかった。約束を守るためではない。この嘘の爆弾が炸裂する瞬は、私がこのをる、そのでなければならなかったからだ。
、私はさんのアドバイスを受け、会社の最寄り駅から徒歩分の所にある産を訪れた。
「具付きのマンスリー対応マンション」
をに探した。蔵庫や洗濯を規に購入して配送させれば、同居の夫や義母に転居が筒抜けになるからだ。