"特上寿司と、消えた妻の半年" 第13話
公平は舌打ちをして画面を伏せ、を掻いた。
「差別だなんて、げさなんだよ! 母さんも悪気があってやってるわけじゃないんだって! 親父をくして寂しいんだからさ、嫁のおがしは目に見てやれよ!」
「半の約束だったわよね? お母さんはもう半もここに居座っているのよ!」
「それを母さんので絶対に言うなよ! 泣かれたら俺が板挟みになって困るんだからさ!」
夫の考回には、「自分が困るかどうか」の基準しかなかった。妻がどれほど血を流していようと、自分の平穏が脅かされない限り、すべては「げさな言いがかり」なのだ。
「唐揚げの夜も、あなたは言ったわよね。『母さんなりに健康を気遣ってる』って。あれも本気で気遣いだとっていたの?」
公平は気まずそうに線を泳がせ、やがて、何気ない調子で恐るべき事実をにした。
「……いや、まあ、実はさ。唐揚げのから、母さんに事に相談されてたんだよ」
私の全の血液が、瞬で凍りついた。
「……相談?」
「そう。『麻子さんは言葉で言っても言うことを聞かないから、ご飯の量で分からせる』ってさ。俺も最初は『まあ適当にしとけよ』って言ったんだけど、母さん、言いしたら聞かないだろ? だから、『面倒だから好きにさせとけ』って答えたんだよ」
好きにさせとけ。
その文字が、私の脳内で何度も、何度も霊した。
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よしえの単独犯ではなかったのだ。夫である公平は、最初から母親の虐待計画をっていた。っていて、承認し、妻が精神に追い詰められていく様を、特等席でポップコーンをべるように眺めて笑っていたのだ。
「……じゃあ、今の鰻も、最初からっていてべたの?」
「鰻は母さんの奢りだろ? ありがたくっただけだよ。何が悪いんだよ」
「私は……おにぎり個を渡されて、『答えしたバツだ』って言われたのよ!?」
「だからさあ! そういう態度がおはダメなんだよ! おが母さんに余計な答えをしなきゃ、母さんだって普通にご飯をすんだよ! 原因はおにあるんだろ!」
私は両をく握りしめ、爪がのひらにい込む痛みで識を保った。
「公平、お願い。度だけでいいから、お母さんに言って。『麻子にだけ別のものをすのはやめてくれ』って。お願いだから、私を助けて……」
度目の、魂を削るような懇願だった。
だが、公平の返答は、私の期待を完全に砕した。
「母さんと揉める方が、百倍面倒なんだよ! 俺は毎回りで神経すり減らして疲れて帰ってきてんだよ! のでまで女同士の諍いに巻き込むな! だいたいさ、このマンションの賃は俺の座から引き落とされてんだろ!? 俺がこのの黒柱なんだから、の雑事くらい、おがしてく回せよ!」
賃が落ちている座には、毎私が汗垂らして稼いだ万円が振り込まれている。夫の拠額は万円だ。費のほぼ全額を支払っているのも私だ。
それを突きつけようとして、私はいとどまった。
事実をいくら理然と並べたところで、この男には届かない。自分に都の悪い真実は、最初から見ないようにシャッターをろしているなのだ。
公平は話を打ち切るように、スマートフォンをベッドのに放りした。
「結局さ、麻子が言謝って、すればすべて丸く収まる話だろ」
その瞬。
私ので張り詰めていた最の細い糸が、プツリと音をてて千切れた。
りは湧かなかった。涙もなかった。
何もわなかった決算の帳簿の数字が、最の検算で完璧に致したのような、恐ろしいほど静かで徹な静寂が、私のを支配していた。
こので、私がのとして扱われるは度と来ない。
妻を盾にして母親に媚びを売る夫と、嫁をいたぶることで自尊を満たす姑。
このの怪物が作りす獄ので、私がき残るためのは、ただつしかなかった。
「……そうね。わかったわ」
私は静かにそう答えた。
公平は拍子抜けしたような顔をし、すぐにしたように品な笑みを浮かべて布団に潜り込んだ。
「分かればいいんだよ。、母さんに言『昨はすみませんでした』って言っとけよ。それで全部丸く収まるからさ」