"特上寿司と、消えた妻の半年" 第8話
すると、よしえはわざとらしく腰にを当て、痛そうに顔をしかめてみせた。
「お父さんをあんな広いにきりで置いておけないって、何度も言ってるでしょう。それにねえ、初枝、私、最は膝の関節が痛くて階段のりりもできないし、夜も細くてじゃきていけないのよ。私はもう、公平のそばにいないときていけない体なの」
毎朝、背筋を伸ばして駅の商をで歩き、カラオケ教で朗々と声を響かせているの言葉とは、到底えなかった。
夕方、私が朝から仕込んだ煮物と、ぷらを卓に並べた。
皿からそれぞれの皿へぷらを取り分けたのは、よしえだった。
初枝さんの皿には、老本とキス、瓜と葉のぷらが綺麗に盛られた。公平の皿にも同じものが盛られた。
そして、私の席のに置かれた皿には――さなナスのぷらが、たった個だけ乗せられていた。
初枝さんの箸が、空でピタリと止まった。
「……麻子さん、あなた、お皿のそれだけなの?」
私が答えに詰まって線を落とした瞬、よしえが横から割り込み、さも親切そうに甲い声をした。
「このね、になると極端にが細くなるのよ。無理にたくさん盛っても、残されたらもったいないでしょう?」
初枝さんはよしえの顔をじっと見つめ、何かを言いかけようとして唇を結んだ。
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そして、無言のまま、自分の皿に乗っていた派な老のぷらを尾、箸でつまんで私の皿のへとそっと移してくれた。
事の途、初枝さんがを決したように話題を切りした。
「ところで姉さん。あっちの郊のはどうするつもりなの? 空きのまま放置しておいたら、湿気で畳ももあっというに腐ってしまうわよ」
私は息を呑み、公平の顔を見つめた。お盆に話しうと約束した、その瞬がやってきたのだ。
だが、公平がをくよりもく、よしえが遮るように答えた。
「丈夫よ、配いらないわ。あっちのはね、信頼できるにお願いして、定期にお入れしてもらっているから」
「……誰に?」
に、公平が議そうに聞き返した。自分の母親の持ちの話であるにもかかわらず、寝にといった表だった。
よしえは瞬だけ、喉に餅を詰まらせたように言葉に詰まった。しかし、すぐにいつもの気な笑顔を取り繕った。
「ご所さんよ! 昔からのお向かいさんにお願いして、通しをしてもらってるの! あんたたちが余計な配することじゃないわよ!」
よしえがこれほど狼狽し、返答に詰まる姿を、私は同居以来初めて目にした。
初枝さんは静かに箸を置き、甥である公平の目を真っ直ぐに見据えた。
「公平。あんたも、それで納得してるの? 麻子さんとは、半だけ預かるっていう約束だったんでしょ?」
公平は麦茶のコップを両で弄び、線を泳がせながら、けない声を絞りした。
「……まあ、母さんも腰が悪いって言ってるし……無理に今すぐ帰らなくても、急がなくてもいいかなって……」
自分のから「お盆にきっちり話をつける」と息巻いていた夫本が、初枝さんが助け舟をしてくれた絶好の会に、真っ先に尻尾を巻いて逃げしたのだ。
よしえは勝ち誇ったような笑を浮かべ、私の顔を馬鹿にするように見つめていた。
夕の片付けの際、初枝さんが空いた皿を両に持ち、台所まで運んできてくれた。
シンクのに並んでつと、初枝さんは声を極限まで潜めて私に尋ねてきた。
「麻子さん……あなた、毎あんな扱いを受けてるの?」
私は胸が詰まり、首を縦にも横にも振ることができなかった。初枝さんは私の張った横顔を見つめ、すべてを悟ったようにく、く頷いた。
「姉さんには、私からで厳しく言っておくからね。……本当にごめんなさいね。姉さんは昔から、公平に対してもね……」
初枝さんが何かを言いかけた、その瞬だった。
「初枝! お茶がめちゃうわよ!」
キッチンの入りの引き戸のに、よしえが音もなくっていた。いつからそこにいたのか、どこまで会話を聞いていたのか。その目はまったく笑っていなかった。
初枝さんは「はいはい、今くわよ」