"特上寿司と、消えた妻の半年" 第6話
「まあ、い。公平はね、こんな病院みたいなっぺらい付け、っ嫌いなのよ」
「お母さん、でも公平さん、先の健康診断で血圧の数値がめにたって配していたので、塩分を控えようとって……」
私が説しようとすると、よしえは馬鹿にしたように先で笑いばした。
「あら、この子の体のことはね、お腹を痛めて産んだから、母親である私が番よくっているのよ。余計なお世話だわ」
よしえはちがると、蔵庫の奥から濃の佃煮の瓶と、塩辛い鮭フレークの瓶を乱暴に取りし、公平の目のにドンと置いた。
「ほら、公平。こんなのない煮物なんて無理してべなくていいから、これをご飯に乗せてしっかりべなさい」
公平は母の顔を伺いながら、無言で佃煮をご飯に盛りに乗せてかき込んだ。
その翌週から、私がどれほど夫を凝らして料理を作っても、卓の央には必ず、よしえのによって塩分のい佃煮や販の濃いタレの瓶がずらりと並べられるようになった。
瓶が本増えるたびに、私が仕事のを縫って作った料理は、「息子のにわない失敗作」として公然と貶められていった。
よしえが本当に執着していたのは、料理のそのものではなかったのだ。「嫁の作った料理を息子が拒絶し、母親のを求めている」
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という、歪んだ権力関係の構図を卓のに化すること、それ自体が目だったのだ。
その夜、寝のベッドに入った、私は背を向けて横たわっていた夫の肩に、そっとを伸ばした。
「ねえ、公平……しだけでいいから、お母さんのこと、相談に乗ってくれない? 私、何をしても文句を言われて、どうしていいか分からないの。お願いだから、に入って助けて……」
公平は寝返りを打つこともなく、枕元のスマートフォンの画面をぼんやりと見つめたまま、面倒くさそうに吐き捨てた。
「寄りの愚痴や言なんて、適当に聞き流せよ。おがいちいち言葉の端々を真に受けて刻になるから、余計に疲れるんだよ」
「聞き流せる範囲のことなら、とっくに聞き流してるわよ……」
「じゃあ、もうちょっとく聞き流せばいいだろ」
会話は、そこで完全に断ち切られた。
パチリと枕元のスタンドライトが消され、寝は漆黒のに包まれた。
助けてほしいと、ので初めてに懇願した言葉が、ただ「流せ」の文字でゴミのように処理された。暗ので井を見つめながら、私の目からたい涙が筋、の穴へと流れ落ちていった。
活費の内訳についても、本当は問い詰めたかった。
なぜ公平は、毎たった万円しか計座に入れないのか。
残りの数万円の料は、体どこへ消えているのか。
度だけ勇気を振り絞って尋ねた、夫は「営業職ってのは、男の付きいでがかかるんだよ。のことだけやってりゃいいおには分からない世界だ」とたく言い放った。
数字の辻褄がわないことを、経理である私が計算できないはずがない。公平もそれをっているからこそ、自分の通帳や与細を、頑なに私の目の届かない所に隠し続けていたのだ。
そして、悪が決定な線を越えたのは、の曜のことだった。
の半ばの締め処理がいのほか順調にみ、珍しくに退勤できたの夕暮れ。たまには族でゆっくり夕飯を囲もうと、弾む取りでマンションの扉をけた瞬、ばしい揚げ物の油の匂いが廊に満ちていた。
リビングのダイニングテーブルには、揚げたての鶏の唐揚げが盛りに盛られた皿ではなく、なぜか分ずつ分けられたつの丸皿が並んでいた。
公平の皿には、ぶりの唐揚げが個。
よしえの皿には、ふっくらとした唐揚げが個。
そして、私の席のに置かれていた皿には――わずか個のさな唐揚げの切れ端と、皿の半分以を埋め尽くすようにうずく盛られた、千切りキャベツのだけだった。
「……お母さん、私の分、これだけですか?」
わず、呆然とした声がから漏れた。
よしえは自分の皿からジューシーな唐揚げを箸でつまんでに放り込み、咀嚼しながら平然とした顔で言い放った。