"特上寿司と、消えた妻の半年" 第2話
享歳。朝の散歩の途で突然倒れ、救急搬送された病院でそのまま息を引き取った。
慌ただしく葬儀と初の法が終わり、線の匂いがようやくれ始めたほど経ったある夜、卓に向かいって座っていた公平が、懇願するように両をわせて私を見つめてきた。
「麻子、本当に頼む。母さんの気持ちが落ち着くまで、半だけでいいから、うちで緒にまわせてくれないか?」
私は元のお茶をすすり、夫の引きつった眉を見つめた。
「お母さん、そんなに精神に参っていらっしゃるの?」
「きりだと、怖くて夜も眠れないらしいんだよ。気を消すと、親父のことばかりいして過呼吸になりそうだって、話でもずっと声をげて泣いてるんだ。なあ、半でいいんだ。季節がつ巡って、母さんの気持ちに理がついたら、ちゃんとあっちのに帰ってもらうから。約束するからさ」
義母のよしえは、ここから私鉄と線バスを乗り継いでパーセント以かかる、部の静かな宅にある階建ての軒で暮らしていた。連れ添った配偶者を突然失った代の女性が、誰もいない広いにで取り残される恐怖や細さは、同じ女性として痛いほど理解できた。
「……わかったわ。半だけなら、お母さんをお迎えしましょう」
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私がそう頷いた瞬、公平はげさなほど何度も何度もをげ、「ありがとう、助かるよ」と私のを握りしめてきた。
客として使っていた側の畳を片付け、の第週、まだ桜の散り残る肌寒いに、よしえが引っ越してきた。
だが、肩にまった軽トラックの荷台から作業員がろしてきたものを見て、私はわず目を見張った。ダンボール箱の隙から現れたのは、黒漆に箔が施された、派な型の仏壇だったのだ。
「お父さんをね、あんなたいにきりで置いてこられるわけがないでしょう」
よしえは当たりといった顔つきで、作業員に指示をして客の窓際の特等席に仏壇を据え付けさせた。線てを磨き、遺のの座布団をえると、よしえはくるりと私に向き直り、両を腹ので揃えて淑やかに会釈した。
「麻子さん、半だけ、本当にお世話になりますね。約束通り半が過ぎたら、ちゃんと元のに帰りますからね」
その殊勝な言葉と丁寧なお辞儀に、私はわずかな堵を覚えた。半の滞のためにわざわざ仏壇まで運び込むものだろうかという違が胸をかすめたが、夫をくしたばかりの老の執着なのだろうと、それ以く詮索することはしなかった。
郊のの残された具や荷物はどうするのかと公平が尋ねた際も、よしえはすかさずハンカチを目元に当ててみせた。
「あののに残った具を見るだけでね、お父さんの姿が浮かんできて胸が張り裂けそうになるのよ。だから、財具の処分や片付けは、専の業者さんにすべて頼んでお任せしたの。そのものも、相続の続きで私の単独名義に登記し直すことになったから」
公平も「そっか、業者に頼んだならだな」と、母親から差しされた遺産分割協議の類に、く考えもせずに実印を押し、印鑑証を渡していた。それ以、よしえのから郊の実の話題がることは、ぱったりと途絶えた。
がでの同居活が始まって最初の週から、キッチンの主導権を握ったのはよしえだった。
私がの夜に丹精込めて作った噌汁の鍋は、翌朝起きるとがすべて排へ流され、綺麗に洗われて切りかごに伏せられていた。そして、よしえがしく作った煮干し汁の濃い噌汁が、公平の漆の椀にだけ、なみなみと注がれていた。
「公平が昔から番好きな付けはね、母親の私が番よくっているのよ。が作ったじゃ、あの子は力がないの」
よしえはダイニングテーブルを拭きながら、わざと私に聞こえるように朗々と告げた。朝の席に着いた公平は、「やっぱり母さんの噌汁は落ち着くなあ」と照れくさそうに笑いながら椀を受け取っていた。