"妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真" 第3話
布が擦れる音がした。
麗子は囁くように言った。
「もう社の顔をしなくていいのよ」
6ヶと同じ言葉だった。
修は目を閉じた。
麗子の指が襟元をれ、頬へ触れた。
たい指だったけれど、そのたさの奥によくった体温があった。
修は頬を寄せそうになった。
そのきを待っていたように、麗子ののひらがしいた。
麗子は修の顔を見げた。
「美保はもう苦しまない」
修はをくした。
「あなたも、もう隠れなくていい」
修は目をいた。
「今夜それを言うんですか?」
麗子の声は震えていなかった。
「今夜だから言うの」
麗子は修のネクタイからをした。
「になれば、私たちはまた母親と娘の夫の顔をしようとする。喪がけるまで待とうとか、咲が落ち着くまで待とうとか、いくらでも理由を作るわ」
麗子は修のを見た。
「そうしてまた、自分たちが何をしたのかを曖昧にする」
修は眉をひそめた。
「曖昧にはできないなら、見て」
壁の計が午07分を示した。
葬儀のは終わり、暦のではもう翌朝になっていた。
麗子は修のを取った。
そのを2のへ持ちげた。
指輪が正面にきた。
麗子は指輪を見つめた。
「これはまだ約束なの?」
修は答えられなかった。
麗子は修の目を見返した。
「それとも、あなたがいい夫だったと信じるための証拠?」
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麗子の親指が指輪の縁をなぞった。
修の指はわずかに張った。
拒むことはできた。
を引けばよかった。
その程度の力は残っていたけれど、引かなかった。
麗子のい指が、指輪をゆっくりと押しげる。
はめていた輪は、関節のところで1度止まった。
麗子は修の目を見た。
問いかける線だった。
許を求めていた。
修が何も言わないと、彼女はもう1度だけ力を入れた。
指輪が抜けた。
が急に軽くなった。
軽くなったはずなのに、修は腕を持ちげていられなかった。
指輪は座卓のへ置かれた。
め始めた茶の隣。
かすかな属音。
28分の沈黙が、その点へ集まった。
麗子は彼の空いた薬指へ付けた。
く、慰めるように。
だが、母親の付けではなかった。
修の呼吸が浅くなった。
麗子が顔をげる。
目元には涙があった。
それでも唇はほとんど触れそうな距までづいた。
麗子は吐息混じりに言った。
「もう美保に隠す必はないでしょう」
その言葉が終わるよりく、スマートフォンが震えた。
1度、2度、座卓の目ので画面が青くった。
麗子の唇が止まった。
修はけなかった。
表示された名は咲だった。
メッセージには文章より先に1枚の画像が添付されていた。
修はスマートフォンをに取った。
指輪のなくなったで画面をく。
最初、何が写っているのか分からなかった。
曇の空、病院の庭、濡れたガラス、反射した蛍灯。
写真の央に2の男女がいた。
男の背はし丸まり、女の腰へ腕を回している。
女は顔をげ、その男の元へ唇をねていた。
修と麗子だった。
半、病院の渡り廊。
2がまだ何もしていないと言い聞かせていた頃。
麗子の声が掠れた。
「どうして……」
修は写真を拡した。
ガラスの反射の奥。
2の輪郭となるように、病姿の美保がっていた。
点滴台に片を置き、もう片方ので胸元の布を押さえている。
顔はかったけれど、その目だけははっきりしていた。
こちらを見ていた。
夫と母を。自分がした2を。
修の親指が震えた。
写真のにさっきの文章があった。
『お父さん、これを見てもまだお母さんをしていたと言える?』
部の空気が変わった。
線の匂いがのき、代わりに病院の消毒液の匂いがの奥へ戻った。
蛍灯、音、ガラスのたさ、美保の線。
修は声を絞りした。
「っていたのか?」
麗子は顔を覆った。
「美保はあの、全部……」
麗子は唇を押さえた。
「違うわ」
修は麗子を睨んだ。
「何が違うんです?」
麗子は首を横に振った。
「美保は私に言ったのよ」
麗子は歩づいた。
その声には必さが混じり始めていた。
「私がいなくなったら、修さんを1にしないでって」
修は信じられないように彼女を見た。
「あの子はっていた。っていて私に頼んだの」