"四十九日の追放、母の隠し遺言" 第10話
誰かにタダで配るような余裕はないわ」
「指ぬきつでも……ダメなのかい……?」 よしえ叔母さんの目に、涙が滲んだ。
私はに向き直り、必に訴えかけた。 「兄さん! 叔母さんは歳です! ここまで歩いてきて、息もがっているのよ! せめて座敷にがらせて、座らせてあげてください!」
「ち話で分だ」 は酷に言い放った。 「指ぬきもダメだ。業者にまとめ売りする契約になってるんだからな。……それより、叔母さん」
は歩へみて、よしえ叔母さんを威圧するように見ろした。 そのい声に、暗い脅迫の響きが混ざる。
「叔母さん。昨、俺が送ったメールの件……ちゃんと、分かってるよな?」
のその言葉に、よしえ叔母さんの柄な体が、びくりと激しく震えた。 叔母さんは杖を握るに力を込め、蒼な顔をさらに張らせた。
「……ええ。メールは、読んだよ……」 消え入りそうな、怯えに満ちた声だった。
私は堪らず、と叔母さんのに割って入った。 「兄さん、メールって何のことですか!? 叔母さんに、体何を送ったの!?」
「おには関係ない」 はたく私の肩を払いのけた。 「親族の正式な連絡だ。部者のおがをすな」
「部者じゃありません! 叔母さん、何を言われたの!?」 私が問いかけると、よしえ叔母さんは震えるで、喪のポケットから古い折りたたみ式の携帯話を取りした。
広告
そして、涙をこぼしながら、画面を私に見せてくれた。
画面に表示されていたのは、――の翌の夜に、から親族同へ斉送信されたメールだった。
『親族各位。 母・静の遺産および実の産に関しては、男である私がすべて単独で相続することに決定いたしました。 同居していた妹の澄子に関しても、実からの退に同しております。 つきましては、の親族からの遺留分の請求、形見分けの求、その切の異議申しては受け付けません。 もしこれに反し、澄子に加担したり、遺産に関してしをする者がいた、がとの親族関係を永久に破棄し、相応の法措置を取る用があります。 母のの借財や介護費用の精算を求められたくないのであれば、切の沈黙を守るよう通告します。 』
文字を追うごとに、私の体の奥底から、激しいりがマグマのように湧きがってきた。 脅迫だ。 男の権力を振りかざし、齢の叔母や親族たちを脅しつけ、切のしを封じ込めていたのだ。 の席で親族たちが押し黙っていたのも、よしえ叔母さんが言葉をみ込んだのも、すべてこの卑劣な脅迫メールのせいだったのだ。
「兄さん……あなた、ここまでして……!」 私の震える声に、は傲にを鳴らした。
「男として、親族をまとめるための当然の処置だ。余計な揉め事を起こさないための恵だよ」
その、庭の奥から久代の甲い声が響いた。 「ちょっと、さん! こんな寄りと油を売ってないで、く作業をめさせなさいよ!」
久代は業者の男たちを引き連れ、台所の勝へと向かっていた。 そして、私をあざ笑うように振り返る。
「次は、台所の戸棚よ! あそこの棚のに、埃をかぶった汚い缶があったでしょ? あんなゴミもまとめて業者にすわ! 鉄クズに持っていけば、数円にはなるでしょうからね!」
久代はそう言い放つと、勝の引き戸をガラガラと音をててけ、台所のへと踏み込んでいった。 そして、迷うことなく吊り戸棚のにち、製の戸を勢いよく引いた。
ガラッ――!
乾いた音が、庭にまで響き渡った。 私は砂利のにったまま、静かに息をえた。 よしえ叔母さんの震える肩を抱き寄せ、徹な線を台所の入りへと向ける。
秒。 秒。 秒。
静寂が支配した台所のから、突然、引き裂くような切り声ががった。
「……な、何よこれ!? ないじゃないの!!」
ドタドタと激しい音をてて、久代が勝からびしてきた。 その顔は真っ赤に気し、額に青筋を浮かべている。
「澄子さん! あの棚にあった青い缶、どこへやったのよ!? 勝に持ちしたんじゃないでしょうね!?」
が眉をひそめ、久代の元へ歩み寄った。