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"四十九日の追放、母の隠し遺言" 第8話

私は仏壇のに正座し、母の写真を見げた。 黒の遺ので、母は穏やかな笑みを浮かべてこちらを見つめている。

仏壇の引きしをけ、私はに収められていたさな革の財布を取りした。 母が元気だった頃から用していた、黒い牛革の銭入れだ。 角が擦り切れ、艶を失ったその財布を、私は仏の経机のに置いた。

「これ……母の財布です。仏壇に戻しておこうとって」

信子さんがを乗りし、その財布を見つめた。 「静さんの財布かい。……は、見たのかい?」

「いえ、母がくなってから、をつける気になれなくて……」

信子さんはし躊躇うような仕を見せたが、やがて真剣な顔つきで私を見据えた。 「澄子ちゃん。けてごらん。あの兄夫婦のことだ、何が入っているか、ちゃんと確かめておいた方がいい」

私はさく頷き、震える指で財布のスナップボタンをした。 パチン、と乾いた音がして、財布がく。

を改めた私の指先が、ぴたりと止まった。 財布のには、千円札が枚と、百円玉が枚。 そして、カード入れのポケットには――母のかかりつけ医の診察券が、枚だけ入っていた。

信子さんが横から覗き込み、眉をひそめた。 「ちょっと待っておくれよ……澄子ちゃん。この財布、キャッシュカードが入ってないじゃないかい」

「……ええ」 私はたくなった指先で、空っぽのカードポケットをなぞった。

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「のカードも、郵便局のカードも、枚もないよ。入ってるのは診察券だけだ。……澄子ちゃん、さっきさんが言ってたよね。『キャッシュカードはから俺が預かってる』って」

「はい。母が最初に骨折して入院したから、兄さんが持っていきました」

信子さんの顔が、見る見るうちに険しくなっていった。 彼女は座卓に両をつき、を乗りして私に詰め寄った。

「だよ、澄子ちゃん! 、あのがあのカードで、誰のおを、何に使ってたとってんだい!?」

「……母の、です」 私の声は、かすかに震えていた。 「母には、父が遺した遺族と、母自の国民が入っていました。ヶに度、数万円が振り込まれていたはずです」

「そのおは、介護費用に使われてたんじゃないのかい!?」

「いいえ」 私は首を横に振った。 「母の入院費も、退院の活費も、兄さんから渡されたことは度もありませんでした。『母さんのは、将来のきな術や施設に入るのために、男の俺がしっかり定期預で貯めている』って……そう言われていましたから」

「嘘だよ!」 信子さんが激しいりの声をげた。座敷の空気がビリビリと震える。 「、度も介護費用をさなかった男が、しくを貯めてるわけがないだろうが! 誰が何に使ってたか、を見るよりらかじゃないか!」

信子さんの言葉が、私の胸に鋭く突き刺さった。 分かっていた。 のどこかで、ずっと気づいていたのだ。 正、たまに実に顔をす兄のなりが、々派になっていたこと。 兄嫁の久代が、来るたびにしいブランドのバッグを持ち歩いていたこと。 そして、母の通帳の残を見せてほしいと頼むたびに、が激して私を鳴りつけていたこと。

信子さんが、私の肩を力く掴んだ。 「澄子ちゃん。カードがないなら……通帳の方は、誰が持ってるのさ?」

「通帳……」

「そうだよ! でおをろすにはカードで分だけど、取引の履歴が全部記録されるのは通帳だろう? その通帳は、今どこにあるんだい?」

私は息を呑み、仏壇の奥、そして母の部の方へと線をらせた。

母は、認症になる直まで、確かな識を持っていただった。 男であるにおを無されるたび、しそうに眉を寄せていた母の姿。 そして、私が仕事を辞めて実に戻ってきた、母が私のを握りしめて言った言葉が、鮮やかに蘇ってきた。

『澄子、すまないねえ。おには苦労ばかりかける。……でもね、母さんはおのこと、ちゃんと見てるからね』

母は、通帳までに渡していただろうか? すべてを奪われるがままに、ただ黙って耐えていただろうか?

「……探してみます」 私は信子さんの目を見つめ返し、はっきりと答えた。

「母が、こののどこかに、何かを遺しているはずです」

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