みかん小説
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"四十九日の追放、母の隠し遺言" 第6話

その顔には、酷な嘲笑が張り付いていた。

「は黙っててちょうだい」 久代の声は、たく透き通っていた。 彼女は腕を組み、縁側につ信子さんに向かって歩踏みした。

「百の分際で、偉そうにを挟まないでくれる? これは族の問題なのよ。部者がをす筋いはないわ」

「部者ですって!?」 信子さんが顔を潮させる。 「私は、静さんとお隣同士で付きってきたんだよ! あんたたちがに度も顔を見せない、澄子ちゃんがどれだけ苦労して静さんを支えてきたか、全部見てきたんだ! それを、あんたは――」

「苦労? 笑わせないで」 久代はで笑い、私へと線を向けた。 その瞳には、侮蔑と笑が満ち満ちていた。

「信を勝に辞めた独りが、この実にもタダでんでいたのよ? それのどこが苦労なのよ」

「タダ……?」 信子さんが呆気にとられたように声を漏らす。

久代は勝ち誇ったように、細い指をてて計算を始めた。 「考えてもごらんなさいよ。この辺りの借だって、軒を借りれば万円はくだらないわ。澄子さんは、賃も払わずにもこのに転がり込んでいたのよ? 万として、で万円。で――百万円よ!」

久代の声が、静かな座敷に響き渡った。 「百万円分の賃をタダにしてもらって、親のに居座っていたのよ? 分すぎるほど贅沢な暮らしをしてきたじゃない。

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もらいすぎだわ! それなのに、実の権利だの形見分けだの、図々しいにも程があるわよ!」

百万円。 その数字を聞いた瞬、私のので、何かがすっとえ切っていくのをじた。 信用庫で、顧客の資産を管理し、何千もの計と数字の矛盾を見抜いてきた私の脳が、無識のうちに弾きす。

万円。 で百万円。 目のの兄嫁は、母の命を繋ぐために私が捧げてきたの歳を、単なる『賃貸借契約のタダ乗り』という数字にすり替えてみせたのだ。

私は静かに顔をげた。 線を逸らさず、久代の目を見据える。

「……万、ですか」

「そうよ!」 久代は私の落ち着き払った声に苛ったのか、キーキーと声を張りげた。 「だから、あなたには実の物を受け取る権利なんてミリもないの! 文句があるなら、その百万円を今すぐここにを揃えて払いなさいよ!」

信子さんが憤に震え、をきかけた。 だが、私は信子さんの腕にそっとを置き、さく首を横に振った。 今、この女と言い争う必はない。 彼女が吐きした数字は、すべて私の記憶に、そして記に刻まれる。

私の態度を諦めと受け取ったのか、久代は満そうにを鳴らした。 そして、元に残った数枚の赤い荷札をバッグにしまい、縁側から庭へとりていく。

「の朝よ」 久代はのドアにをかけ、振り返って私を睨みつけた。 「荷札を剥がしたら承しないからね。それまでに、自分の汚い荷物はまとめて、いつでもてけるようにしておきなさい!」

バタン、と乱暴にのドアが閉まり、いは甲いエンジン音を撒き散らしながら、実のをてった。 排気ガスの匂いが、の澄んだ空気に濁って漂う。

が見えなくなるまで見送った、信子さんががくりと肩を落とし、私の元へと駆け寄ってきた。

「澄子ちゃん……あんた、丈夫かい? なんなの、あの女は! タダでんでただなんて、よくもまあそんな鱈目が言えたもんだ!」 信子さんの目は、悔しさで潤んでいた。 「タダですって……? 冗談じゃないよ。おむつ代は誰が払ってたのさ! 静さんが使うおむつだって、ひとに何万円もかかってたじゃないか!」

信子さんのその言葉に、私はく、静かに息を吐きした。 が、私の頬をたく撫でていく。

「信子さん。……ちょっと、台所に来てくれる?」

信子さんを促し、私たちは実の台所へと入った。 暗い板のに、昼がりのが細く差し込んでいる。

信子さんはりが収まらない様子で、腕を組んで息を荒らげていた。 「おむつ代だけじゃないよ! 静さんが腰たなくなった、廊にすりを付けたでしょう? あの事代だって結構な額だったはずだよ。

それに、週に回の通院のタクシー代……あれ全部、さんがしてくれてたんじゃないのかい?」

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