みかん小説
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"四十九日の追放、母の隠し遺言" 第4話

畳の央には、母が用していた使い古された文机が置かれている。 私は正座し、文机の引きしから、布張りの分い冊の帳面を取りした。

表にの箔押しで『記』と刻まれたそのノートは、母が倒れたの、私が母の健康状態と々の介護記録を残すために購入したものだった。 母が何に起きたか。 朝をどれだけべたか。 体温と血圧はいくつだったか。 どの薬を何錠んだか。 、私はも欠かすことなく、この記に母の命の記録を刻み続けてきた。

そして、母が息を引き取ったのページで、々の健康記録は途絶えていた。 私は引きしから使い慣れた黒いボールペンを取りし、キャップをした。 。 今の付の欄をく。

ペン先をらせるが、微かに震えた。 、この記には母の体調と、母が発した謝の言葉しかいてこなかった。 誰かへのみ言や、悪など、度もいたことはなかった。 だが、今夜、私はこの記に、初めて兄の名をき記した。

『。母の法。 兄さんと久代さん、親族ので私に実からの退を宣告。 「世話しただけの妹に実の取り分はない」 「男の俺が全部もらう。今週にてけ」 母のキャッシュカードはから兄さんが所持しているとのこと。

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玄関の鍵の返却を求される。 達也さんが庇ってくれた。よしえ叔母さんは脅えているようだった』

き終えた文字を、じっと見つめる。 インクが乾くにつれて、私ののにあった茫漠としたしみが、徹な決へと変わっていくのをじた。

数えて、残す。 信用庫で、数字と帳簿と向きい続けてきた私の誇りにかけて。 彼らが私に何を言い、何を奪い、何を捨てろうとしたのか。 そのすべてを、文字も漏らさずに記録し、残すと決めた。

パタパタと、廊を歩くスリッパの音がづいてきた。 部の引き戸が、ノックもなしに乱暴にけ放たれる。 そこにっていたのは、コートを羽織り、帰宅の準備をえた久代だった。

久代は部のを見回し、机のの私を侮蔑の差しで見ろした。 「澄子さん。まだ気をつけてるの? もったいないわね。気代を払うのは、これからここにむ私たちなのよ」

私は静かに記を閉じ、文机のに両を置いた。 「すみません。今、消すところでした」

「私たちはもう、自宅へ帰るからね」 久代はバッグの持ちを握り直しながら、然と言い放った。 「いい? の朝、ここに買取の業者を連れてくるから。お母さんの遺品は、全部その業者に引き取らせておに変えるわ。のの物、全部よ。余計な物は切残さないでちょうだい」

「……母の物を、全部ですか」

「当たりでしょう! ゴミ敷にしておくわけにはいかないのよ。の朝よ。それまでに自分の私物はまとめておきなさい。じゃあね」

久代は挨拶もそこそこに踵を返し、玄関へと向かった。 やがて、玄関のい引き戸が閉まる音と、兄の運転するのエンジン音が夜のに響き、次第にざかっていった。

実には、再び完全な静寂が訪れた。 私はちがり、部の灯の紐を引いた。 暗に包まれた畳で、音だけが静かに響いている。

。 母がかけて紡いできた活のすべてが、あの夫婦によってに変えられようとしている。 私は暗ので、母の文机にそっと触れた。 肌のたさが、私の指先を通して、胸の奥くまで染み渡っていった。

翌、。 昨のたいが嘘のようにがり、の柔らかな陽が実の庭を照らしていた。 私は朝から、母の部の押し入れを片付けていた。 だが、片付けると言っても、母のいが詰まった品々をにすると、は自然と止まってしまう。 母が使っていた縫いの座布団、私に編んでくれた毛糸のチョッキ、そして庭の縁側に置かれた、黒い鉄製の踏みミシン。

午を過ぎた頃、庭の方からカサリと落ち葉を踏む音が聞こえた。 「澄子ちゃん、いるかい?」

親しみのある、ししゃがれた声だった。 縁側にてみると、庭の戸のところに、所で百を営んでいる信子さんがっていた。

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