"十字の紙片と売られた生家" 第16話
「お弁当、ありがとう! ってきます!」
「はい、に気をつけてね。いってらっしゃい」
玄関の引き戸がガラガラとき、軽な音とともにへびしていく結菜のろ姿を、私は見送りました。
その背は、昨まで親の顔を窺って縮こまっていた姿とは見違えるほど、真っ直ぐに伸びていました。
午を過ぎた頃、内弁護士から庭裁判所への見選任および親権止の申が正式に受理されたとの連絡が入りました。
さらに、健太の会社からは、真由美のキックバック未遂作が社内コンプライアンス違反として問題され、健太は事業部からされて方支社への無期限向が決まったという報告も届きました。
カナダへの華やかな移も、タワーマンションの購入も、全ては欲に目が眩んだ者たちの儚い泡と消えたのです。
彼らは今頃、自分たちが犯した過ちのさに打ちひしがれ、勝な欲望の代償を払っていることでしょう。
けれど、私结菜のには、彼らへの憎しみやみはもう欠片も残っていませんでした。
ただ、目のにある平穏な々を慈しみ、互いをいやる温かい活を守り抜くことだけを考えていました。
庭にてみると、の当たる角で、さな犀のが黄の粒をいっぱいに零していました。
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甘く爽やかなりが、の柔らかなに乗って庭いっぱいに広がっていきます。
私は縁側に腰をろし、陽だまりのでく息を吸い込みました。
ふと胸のポケットに触れると、結菜が渡してくれたあのさな文字の切れが、今も切に収められていました。
の端はし擦り切れていましたが、そこに込められた孫娘の勇気とは、永に褪せることはありません。
夕暮れ、くのチャイムが鳴り響く頃、玄関の引き戸がガラガラと気よい音をててきました。
「おばあちゃん、ただいま!」
元気いっぱいの結菜の声が、吹き抜けのリビングの隅々までるく響き渡りました。
「おかえりなさい、結菜」
私がちがり、笑顔で玄関へ向かうと、そこにはを浴びて満面の笑みを浮かべるしい孫娘がっていました。
守り抜いてきたこので、私たちの温かく確かなしい物語が、いま力く紡がれ始めていました。