"十字の紙片と売られた生家" 第14話
台所に並んでつと、窓から差し込む正午のが、ステンレスのシンクをまばゆく照らししていました。
結菜は制のブレザーを脱いで子の背にかけ、シャツの袖をきれいにまくりげると、慣れたつきで米を研ぎ始めました。
ボウルので米粒が擦れうシャッシャッというリズミカルな音が、静かだった台所によく響き渡ります。
の歳ので、私がこの台所で結菜に教えてきたことのすべてが、そのさな指先に宿っていました。
「おばあちゃん、お米のお加減、ちらし寿司だからいつもよりし固めでいいんだよね?」
振り返った結菜の横顔には、さっきまでの青ざめたは微もなく、ききとした血が戻っていました。
「ええ、そうよ。し控えめにして、昆布を枚沈めておいてちょうだいね」
私はそう答えながら、蔵庫から干し椎茸の戻し汁と蓮根、参を取りしました。
まな板のに置いた蓮根に包丁を入れ、く半切りにしていくトントンという音が、リズミカルに台所を満たしていきます。
鍋に汁と醤油、みりんをわせ、細切りにした具材をゆっくりと煮含めていくと、甘辛い懐かしい湯気がふわりとちりました。
かつて、夫の修がきていた頃、健太のや入学式のたびに、この台所でがかりで作った祝いの寿司のりと全く同じでした。
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あの頃は、族全員で囲む卓がずっと続くのだと信じて疑いませんでした。
しかし、のは欲によって変わり、温かかったはずの絆も歪んでしまうことがある。
それでも、私が注いできたは、すべてが無に帰したわけではありませんでした。
健太には届かなかったそのいが、目ので懸命に卵を溶いている孫娘のには、確かに根を張り、を咲かせていたのです。
「おばあちゃん、卵、きれいに焼けたよ」
結菜が嬉しそうに見せてくれたフライパンのには、く、破れ目つないきれいな錦糸卵が黄に焼きがっていました。
「まあ、に焼けたわね。私よりもずっと筋がいいわ」
「えへへ、おばあちゃんが昔から教えてくれたからだよ」
炊きがったばかりの湯気のつご飯を桶に移し、わせ酢を回しかけると、ツンとしたよい酸が腔をくすぐりました。
結菜が団扇を両で持って懸命にを送り、私がしゃもじを寝かせて切るように酢飯を切っていく。
で呼吸をわせ、汗をかきながら作るそのは、どんな級レストランの料理よりも贅沢で、尊いものにじられました。
煮含めた具材を酢飯に混ぜ込み、皿に盛り付けた、黄の錦糸卵と茹でた絹さや、甘辛く煮た老を散らしました。
鮮やかなちらし寿司がテーブルの央に置かれたとき、リビングの柱計がぽーん、ぽーんと正午を告げました。
「いただきます!」
結菜はをわせると、きめのスプーンでちらし寿司をいっぱいに頬張りました。
「……んーっ! すごく美しい! やっぱり、おばあちゃんのが世界で番好き!」
もぐもぐとをかしながら涙目を潤ませて笑う結菜を見て、私の目が再びくなりました。
「たくさんおべ。もう誰にも気兼ねすることはないんだからね」
「うん! おかわりもいっぱいする!」
階の主を失った広すぎるはずのは、もはやえ切った牢獄ではありませんでした。
結菜の弾むような笑い声が、吹き抜けの井に優しく反響し、全体に温かい血を通わせていくようでした。
昼を終えて片付けを済ませた、私たちは仏壇のに並んで正座しました。
結菜は夫の遺に向かって、くをげました。
「おじいちゃん、私、おばあちゃんをずっと切にするからね。見守っていてね」
遺のの修は、まるでの会話を聞いていたかのように、穏やかな差しで私たちを静かに見守っていました。
そのの夕方、内弁護士から本の話が入りました。
「美智子さん、先ほど産業者の佐久氏から連絡がありました。社内調査の始を通告したところ、完全に観し、真由美さんとの裏契約およびキックバックのをすべて破棄し、正式に謝罪のを示してきました」