みかん小説
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"十字の紙片と売られた生家" 第9話

それが修との約束だからね」と言ってくれたあの言葉が、鮮に蘇りました。

私は計を見ました。

午分。

夜がければ、午には健太が「続きのために実印をせ」と、あの卑劣な顔で迫ってくるはずです。

それまでに、すべてのを打たなければならない。

私は提げ庫から権利証と通帳を取りすと、代わりにの入っていない古い帳とダミーの認印を庫に戻し、蓋を閉めて元の隠し所へと戻しました。

本物の類と通帳、そして結菜の字のを胸に抱え、自へと戻った私は、机に向かってノートをきました。

そして、の朝からの息子夫婦の方、結菜の保護、産詐欺の阻止、そして彼らの悪を公にのに晒すための綿密な反撃計画を、文字ずつ徹にき記し始めました。

私を無力な老いぼれと侮り、踏み躙ろうとした報いを、骨の髄までわわせてやる。

夜けのい静寂の、私のには切の迷いも恐れも消えり、孫娘を守るための揺るぎない覚悟だけが燃え盛っていました。

 

の空がみ始め、障子の桟が青い朝のを帯びてくっきりと浮かびがってきました。

私はもしていませんでしたが、の芯は驚くほど冴え渡り、疲労すら切じていませんでした。

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午。私は静かに支度をえ、黒いなカーディガンを羽織ると、机ののノートを閉じました。

結菜が命がけで渡してくれた字の切れ、そして本物の権利証と通帳は、布袋に入れて肌さず懐くに忍ばせました。

自の引き戸を静かにけ、階段を踏みしめないよう気をつけて階の廊を歩き、リビングの話台へと向かいました。

元の内弁護士の名刺には、事務所の固定話の隣に、緊急用の携帯話番号が万できされていました。

受話器を取り、朝であることの無礼をので詫びながら、震える指先でその桁の番号をプッシュしました。

ツーツーという呼びし音が回鳴ったところで、カチャリと受話器のがる音がしました。

「はい、内です」

受話器の向こうから聞こえてきたのは、の経験と落ち着きをじさせる、く通る声でした。

「……内先でしょうか。突然の朝のお話、変申し訳ございません。修の妻の、美智子でございます」

私の声を聞いた瞬、内弁護士の息を呑む気配が伝わってきました。

「美智子さん! こんな朝くに……体どうされたのですか。何か修の件で、あるいはご自のに何かありましたか?」

私は昨夜からの連の来事を、簡潔に、しかし点をつも漏らさずに内先へと伝えました。

健太夫婦が突然来カナダに移すると言いし、私を劣悪な奥の老ホームへ放り込もうとしていること。

このを真由美のりいの産業者と結託し、裏のリベート目当てで相の半値以で売り払おうとしていること。

今朝番で私の実印と通帳を奪い取り、の受取座まで自分たちの名義に改ざんしようとしていること。

そして何より、孫娘の結菜が怯え、私に泣きながら助けを求めてきたこと。

受話器の向こうで、内先が静かに、しかしいりを込めて息を吐きす音が聞こえました。

「……なるほど、そういうことでしたか。修があれほど切に遺したと、奥様と結菜ちゃんのを、そんな卑劣な段でい物にしようとは、言語断です」

内先の声は、瞬にして百戦錬磨の法曹のそれへと切り替わりました。

「美智子さん、よくぞサインや捺印をするに連絡をくれました。絶対に、何があっても実印や権利証を健太たちに渡してはなりませんよ」

「はい。本物の権利証と通帳は、すべて私が隠し持ちました。先、私はこのも、結菜の未来も、あの子たちに奪われたくありません」

私のい決を聞いて、内先は力く請けってくれました。

「してください。修が、私に預けてくれた公正証遺言には、この産の全所権が美智子さんにあることはもちろん、美智子さんの同なき売買や名義変更を切禁じる条項が完璧に組み込まれています。

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