"十字の紙片と売られた生家" 第3話
提示されていた額は、隣の相価格の半分にも満たない、およそ考えられないほどい売却概算額でした。
と建物をわせて、わずか千万円代半。
この所なら、だけでも千万円はらないはずなのに、なぜこれほどく買い叩かれているのか。
信と違が、胸の奥底でチリチリと音をててくすぶり始めました。
しかし、健太も真由美も、私の疑問にを傾けるつもりなど毛ないようでした。
私の胸の奥で、カチリとたい錠がりるような覚がありました。
息が詰まるほどのしみが、ゆっくりと、しかし確実に徹な諦へと形を変えていきました。
馬灯のように、このの々の記憶が私の脳裏を駆け巡りました。
健太が真由美と結婚し、孫の結菜がまれたのは、今からのことです。
真由美は「総職としてのキャリアを捨てたくない」と言い、健太もまた「共働きでなければ活が苦しい」と言いました。
夫をくして暮らしをしていた私は、息子夫婦を助けたいで、同居をく受け入れました。
しかし、同居が始まってからというもの、真由美は台所につことすらほとんどなくなりました。
掃除も、洗濯も、庭の入れも、すべて私の仕事になりました。
結菜が幼稚園にがる頃には、送り迎えはもちろん、毎朝のお弁当作りも私の常業務となりました。
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結菜が学にがってからも、をせば仕事を休めない夫婦に代わって、私が病院へ連れてき、夜通し病を続けました。
「お義母さん、これ買っておいてくださいね」
真由美はそう言って、自宅の費や費のレシートを当然のように私の机に置くようになりました。
夫が遺してくれた命保険と遺産は、そうやってしずつ、息子の族のために削られていきました。
健太がきなプロジェクトで失敗し、補填が必だと言ったときも、私は定期預を解約して百万円を用てました。
真由美がママ友との付きいで見栄を張るためだと言って級をねだったときも、援助をしました。
私はいつだって、族の幸せのためならと自分を回しにしてきたのです。
それなのに、結菜がになり、自分たちのがかからなくなった今、息子夫婦にとっての私は何だったのでしょうか。
ただの無償の政婦であり、を吸いげるだけの便利な貯箱に過ぎなかったのです。
そして用が済めば、カナダへの移という華やかなの邪魔になるからと、奥の施設へ追いやろうとしている。
私の全が、ゴミのように元へ投げ捨てられたのだと、はっきりと理解しました。
私は膝ので固く握りしめていたを、ゆっくりと緩めました。
爪をてていたの甲には、赤いの痕がくっきりと残っていました。
私はく、誰にも気づかれないように肺の底まで息を吸い込み、たい空気を胸いっぱいに満たしました。
ここで取り乱して泣き叫んだところで、何のもない。
彼らの酷なにけを乞うたところで、踏みにじられるだけだ。
私はを完全に押し殺し、顔の筋肉を直させたまま、静かにをきました。
「……そう。分かったわ」
私の唇から滑りたその声は、自分でも驚くほど平坦で、凪いだ面のように静かでした。
その言が部の空気を震わせた瞬でした。
真由美の引きつっていた目元が、まるで品のようにパッとるく輝きました。
真由美は健太の腕に嬉しそうにしがみつき、満面の笑みを浮かべて両を叩きました。
「よかった! やっぱりお義母さんは話が分かるから助かります」
その声の調子は、先ほどまでの猫撫で声とは打って変わって、まるで商談を成させた営業マンのように軽やかでした。
健太もまた、肩からい荷物をろしたかのようにく息を吐き、元を緩めました。
「さすが母さんだ。話がくて助かるよ。これなら来週には契約をまとめられそうだ」
は私のたい目線にすら気づいていませんでした。
彼らののはすでに、カナダでの豪遊活と、このを売ってに入るのことだけで満たされていたのです。