"血染めの写真と三文字のSOS" 第14話
「だからね、美桜ちゃん。これは怖いいの写真じゃないんだ。君がお母さんを救った、世界で番誇らしい『英雄の証』なんだよ」
「……えいゆう……?」
「そうだよ。君はお母さんを救ったさなヒーローだ」
私はちがり、あらかじめ用しておいた、質なウォールナット材で作られたさな写真てをに取った。そして、その血染めの写真を丁寧に額縁のに収め、スタジオの央、最も目つメインウォールの角へと掲げた。
族写真やの華やかな写真が並ぶで、その枚だけは異質だった。角に黒ずんだ血がこびりついた、くたびれたスナップ写真。
しかし、その額縁に収められた写真は、どんな名画よりも神聖で、力い輝きを放っていた。
「見てごらん、美桜ちゃん。ここに飾ったよ」
美桜ちゃんは呆然と、壁の写真てを見げた。
「この写真を見るたびに、俺はいすんだ。美桜ちゃんのきな勇気を。君がいてくれたから、今、こうしてみんなで笑いえているんだってね。だから、もう怯える必はない。胸を張っていいんだよ」
美桜ちゃんはい、じっとその額縁を見つめ続けていた。
そして、ぽつりとさな声を漏らした。
「……しゃしんって、だれかを助けることができるの……?」
「ああ、助けられるよ」
「……ほんとうに?」
「本当さ。君自が、それを世界に証したんじゃないか」
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美桜ちゃんの瞳から、再び粒の涙が零れ落ちた。しかし、それは恐怖の涙ではなかった。張り詰めていたの結び目がほどけ、温かな自尊が胸を満たしていく涙だった。
「……わたしの写真が、お母さんを助けた……」
「そうだ。君の写真が、お母さんを救ったんだ」
美桜ちゃんは額縁を見げたまま、しばらく静かに泣いていた。私は何も言わず、そのさな背を温かく撫で続けた。
やがて涙を拭った美桜ちゃんが、私のの裾をそっと引っ張った。
「……おじさん」
「ん?」
「……わたし、もっと写真のこと、りたい」
「え……?」
「写真がだれかを助けられるなら……わたしも、やってみたい」
美桜ちゃんの瞳の奥から、怯えのは完全に消えっていた。そこには、未来を見つめる女の、凛としたが宿っていた。
「ああ! いくらでも教えてやるよ!」
その瞬、美桜ちゃんは初めて、自らので私のきなをぎゅっと握りしめてくれたのだった。
あのを境に、美桜ちゃんは劇に変わった。
カメラを向けられても、もう逃げさない。それどころか、スタジオの材に興津々でづき、太と緒に楽しそうにレンズを覗き込むようになった。
「美桜ちゃん、緒に写真撮ろうぜ!」
「うん!」
カメラのに並んだは、満面の笑みでピースサインを作った。ファインダー越しに見える美桜ちゃんの瞳は、キラキラと輝き、命力に満ち溢れていた。
その週の曜の夕暮れ。
撮の片付けを終えた私は、編集デスクで作業をしていた結さんに声をかけた。
「結さん、ちょっといいですか?」
「はい、何でしょう?」
「の曜、族写真を撮りませんか?」
結さんは瞬驚いたように目を見張ったが、すぐに柔らかな微笑みを浮かべた。
「族写真……いいですね。ぜひ撮りましょう」
曜、スタジオには全員が集まった。
父と母、太と美桜ちゃん、結さん、そして私。
「俊介、おも入るんだろう? 脚を使ってタイマーをセットしなさい」
父が嬉しそうに指示をし、母が子供たちのの襟元をえる。
「俺、真んがいい!」
「わたしも!」
「よし、じゃあで真んに座りなさい」
子供たちが無邪気に位置を決め、そのろに両親がち、私と結さんが並んで腰をろした。
私はカメラのタイマーを秒にセットし、シャッターボタンを押し込んで列へと戻った。
ピッ、ピッ、ピッという子音がスタジオに響き渡る。
「はい、みんな笑って! チーズ!」
カシャリ。
よいシャッター音が響き、全員が笑顔のまま息を吐いた。
撮が終わった、私は結さんをスタジオの奥の休憩スペースへと招き入れた。
「結さん、これを見ていただけますか」
私は元に用していた、革張りのな冊のアルバムを差しした。
「アルバム……ですか?」
結さんは議そうにページをいた。
その最初の枚目には、あの、壁に飾った血染めのSOS写真の複写が丁寧に貼り付けられていた。