みかん小説
本棚

"血染めの写真と三文字のSOS" 第13話

太が無邪気に「美桜ちゃん、写真撮ろうよ!」と誘っても、「やだ!」とい調で拒絶して部をてってしまうのだ。

「結さん……美桜ちゃんの様子、し気になりませんか?」

夜、編集で作業をしていた結さんに尋ねると、彼女はい苦悩のを浮かべてペンを置いた。

「……はい。私も気づいていました」

「何か、い当たる理由はありますか?」

結さんは唇をく噛み締め、消え入りそうな声で告した。

「……あの、私がけなくなったせいで、美桜にあの写真を作らせてしまったからです」

「あの写真……?」

「歳のさな子供が、自分ののひらを切り裂いて、自分の血で文字をいて……あの写真を見るたび、あの子は母親が血を流して倒れていた景や、父親の暴力の記憶をいしてしまうんです。あの子にとって、『写真』というものは……恐怖と絶問の象徴になってしまったんです」

結さんは肩を震わせて泣き崩れた。

「私のせいです……私がけない母親だったせいで、あの子のに消えない傷を植え付けてしまった……」

「結さんのせいじゃありませんよ」

私は優しく声をかけたが、結さんの涙は止まらなかった。

スタジオに残された私は、壁に飾られた無数のポートレートを見げながら、く考え込んだ。

美桜ちゃんにとって、写真はトラウマの引きになってしまっている。

広告

カメラを向けられるたびに、血を流したあのの恐怖が鮮に蘇るのだ。

なら――そのを、変えてやることはできないだろうか。

過の来事そのものを消しることはできない。だが、あの写真に込められた『』を、恐怖の記憶から、誇りと希望の記憶へと塗り替えてやることはできるはずだ。

私は机の引きしの奥から、ラミネート加を施して切に保管していた、あの枚の写真を取りした。

コンビニのに落ちていた、血染めのSOS写真。

赤黒い血の跡はすでに黒ずんでいたが、女の無邪気な笑顔と、裏面に刻まれた必の文字は、今でも鮮に残っている。

「……これだ」

私はつの確信に辿り着いた。

翌の放課、私は階のリビングで絵本を読んでいた美桜ちゃんを、階のスタジオへと静かに呼びした。

「美桜ちゃん、ちょっとだけお話しできるかい?」

美桜ちゃんは警戒するようにしを引いた。またカメラを向けられるのではないかと怯えているのだ。

「写真を撮るんじゃないよ。君に、見せたいものがあるんだ」

私はポケットから、あの枚の写真を取りし、美桜ちゃんのさなのにそっと差しした。

写真を目にした瞬、美桜ちゃんの表が張り、息が止まった。

「……それ……」

「覚えているかい?」

「……みたくない」

美桜ちゃんが顔を背け、ずさりしようとする。

私はそのさな肩に優しくを置き、そのにしゃがみ込んで目線をわせた。

「見たくないよな。怖かったよな。でも、美桜ちゃん、つだけ俺の話を聞いてほしいんだ」

美桜ちゃんは唇をキュッと引き結び、涙をいっぱいに溜めた瞳で私を見つめ返した。

「お母さんが階段から落ちてけなくて、話も壊れて、誰にも助けを呼べなかった。本当に怖かったよな。自分のを切って、血で字をいて、コンビニまでって……すっごく痛かったよな」

美桜ちゃんの肩が、ビクッと震えた。

「歳の女の子が、たったであんなことを成し遂げた。どれほどの勇気が必だったか、の俺にだって像もつかないよ」

「……やめて……」

「でもね、美桜ちゃん。この写真があったから、俺は君たちの元へ駆けつけることができたんだ」

美桜ちゃんの瞳が、わずかに揺れた。

「もし、君がこの写真を作ってくれなかったら、俺は君たちのピンチに気づくことすらできなかった。お母さんは、あのたい階段のでずっと倒れたままだったかもしれない。君がこの写真を作って届けてくれたから、お母さんの命は助かったんだ。君の勇気が、お母さんを救ったんだよ」

美桜ちゃんの目から、ポロポロと涙が溢れした。

「……でも、こわかった……」

「うん、怖かったよな」

「いたくて……なきたかったけど……なき声をしたら、お母さんを助けられないってって……」

「うん、偉かったな。本当に頑張った」

私は写真を両で包み込み、美桜ちゃんに見せた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: