"血染めの写真と三文字のSOS" 第8話
「……あいつは、絶対にまた来ます。執い男なんです。度自分の支配から逃げしたを、絶対に許さない性格なんです……」
「丈夫です」
私は結さんの目を真っ直ぐに見据え、力く告げた。
「もしあいつがここへ現れたら、俺が必ず追い返します。警察にも相談して、法な続きもめましょう。もう、あなたたちきりで怯える必はありません」
結さんは目を見き、そしてく、くをげた。
その決を胸に、私は翌からスタジオの業務と並して、防犯対策の化へと乗りした。
スタジオの階に母子が移りんでから週が経過した頃、のシーズンを目に控え、スタジオの編集デスクには連撮された量の写真データが積みになっていた。
私はパソコンのモニターに向かい、ペンタブレットを握りしめてレタッチ作業に没していた。肌のトーンの補正、着物の細かなシワの除、背景のな映り込みの修正――でこなすには途方もない作業量だった。
「さん、温かいお茶をお持ちしました」
松葉杖を器用に操りながら、結さんがお盆に乗せた湯呑みを運んできてくれた。
「あ、すみません、ありがとうございます。でも、はまだ無理しないでくださいね」
「これくらいのお伝いしかできませんから」
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結さんは机にお茶を置くと、ふとモニターの画面に線を留めた。かれていたのは、プロ仕様の画像編集ソフト『Photoshop』の画面だった。
「これ……Photoshopですか? 懐かしい……」
「ええ、写真のレタッチ作業をしているんです。使ったことがあるんですか?」
「はい。広告代理代、ポスターやカタログのデザインで毎朝から晩まで触っていましたから。レタッチやカラーグレーディングは、専学代から番得な分野だったんです」
その言葉を聞いた瞬、私ののに閃くものがあった。
「結さん、もしよろしければ……し試してみていただけませんか? このお子さんのポートレート、肌のハイライトとの馴染ませ方にし悩んでいまして」
「えっ……私が、ですか?」
結さんは戸惑いながらも、私の勧めに従って編集用の回転子に腰をろした。
そして、ペンタブレットのスタイラスペンを指先で握りしめた瞬――彼女の纏う空気が、劇に変化した。
先ほどまでの慮がちで儚げな雰囲気が瞬にして消えり、職のような鋭く澄んだ集力がその横顔に宿ったのだ。
「……失礼します」
カチカチと気よいクリック音とともに、ショートカットキーを叩くの指先が目にも止まらぬ速さでキーボードのを滑る。
拡されたポートレートの肌から、ブラシツールを使ってなや赤みが瞬くに消しられていく。
トーンカーブを繊細に調し、瞳のに自然なキャッチライトを滑り込ませ、着物の絹の質を際たせる。
それは、まさに魔法を見ているかのようだった。
私が以を抱えていた作業を、結さんはわずか分らずで、完璧なクオリティで仕げてしまったのだ。しかも、械な自補正とは線を画す、被写体の命力とらしさを極限まで引きした、プロフェッショナルの仕がりだった。
「……こんなじで、いかがでしょうか?」
結さんがしそうに振り返った。
「す、すごい……! いかがでしょうかどころじゃないですよ、完璧です! 俺がやるより何倍も綺麗で、何倍もい!」
「そんな……袈裟ですよ」
照れくさそうに微笑む結さんの元へ、ちょうど差し入れの煮物鍋を抱えた母がスタジオの引き戸をけて入ってきた。
「俊介、お昼ご飯を持ってきたわよ……あら、結さん、何してるの?」
「母さん、これを見てくれよ! 結さんがレタッチしてくれたんだ!」
モニターを見た母は目を丸くし、嘆の声をげた。
「まあ……! なんて綺麗なお写真なのかしら! 肌がつやつやして、まるできているみたいじゃない!」
「すごいだろ? 元々デザインのプロだったんだってさ」
母は腕を組み、真剣な差しで結さんをじっと見つめた。元々の所を見抜くのが得な母の瞳が、確信に満ちて輝いている。
「結さん。あなた、素らしい才能を持っているのね」