"血染めの写真と三文字のSOS" 第3話
今朝も、歳になる母が、湯気のつ包みを抱えてスタジオの勝から顔をしてくれた。柄だが世話好きで、料理の腕はプロ並みの母は、ほぼ毎がに通って事を伝ってくれている。
『おお、太。今は聞社代の古い単焦点レンズを本持ってきてやったぞ』
母のろから現れたのは、歳の父だった。元聞社の敏腕報カメラマンで、退職した今でも無類の材オタクである父は、孫の太と緒にレンズを磨いてはニヤニヤと笑いうのが課になっていた。
族に支えられ、スタジオの経営自体は域のコミも伝って順調だった。だが、撮からプリント、そして膨なレタッチ作業までをすべて私でこなさなければならず、々の業務は常にキャパシティの限界を迎えていた。誰か腕のいいアシスタントがいればいいのだが、個のさなスタジオに雇えるような材はそう簡単に見つからず、求票をす余裕もないまま忙に忙殺されていたのだ。
そんな々の最に、あの血染めの写真が私の元に落ちてきた。
息を乱しながら、宅の入り組んだを駆け抜ける。
りながら、私ののでは恐ろしい像が嵐のように渦巻いていた。
あの血は誰のものなのか。写真の女が虐待を受けているのか、それとも庭内での凄惨な暴力か、あるいは突発な事故か。
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どんな事にせよ、あんな幼い子供が自分の指を傷つけ、血を使ってまで助けを求めるなど、尋常な事態であるはずがない。切迫した絶望の淵にいなければ、あんな真似はできるはずがないのだ。
やがて、目の所に該当する古い造階建ての民のに辿り着いた。
周囲の宅からし奥まった所に位置するそのは、壁のモルタルが黒ずみ、昼でも暗い空気を纏っていた。扉はなく、玄関アプローチのコンクリートには雑がい茂っている。
そして、何よりも異様なことに、玄関のアルミ製の引き戸が、センチほど隙をけて半きになっていた。
「……すみません! どなたかいらっしゃいませんか!」
私は息をえながら、半きのドアに向かって声を張りげた。
しかし、返事はない。しんとした静寂のに、くをるのエンジン音だけが微かに響いている。
胸の奥を突きげる嫌な予を振り払うように、私はを伸ばし、引き戸をガラガラと音をててけ放った。
「ごめんください! 誰か――」
玄関のにを踏み入れた瞬、私の喉から言葉が消え失せた。
暗い廊の奥、階へと続く製階段のすぐに、の女性が力なく横倒しになって倒れていたのだ。
女性は片方の首を両でく抱え込み、痛みに耐えるように背を丸めていた。
額には粒の油汗が滲み、苦痛に歪んだ横顔はのように真っだ。は乱れ、周囲には割れたスマートフォンのガラス片が散らばっている。
そして、その倒れ伏す女性の体を覆い隠すように、のさな女の子が覆いかぶさって座り込んでいた。
コンビニの写真に写っていた、あの女だった。
女はさな肩をらせ、母親を守るように両腕を広げ、玄関につ私を鋭いで睨みつけていた。そのさな両は、赤黒い血で痛々しく汚れていた。
「……だれ……?」
女のから、掠れた、震える声が漏れた。
恐怖で刻みに震えているにもかかわらず、その瞳には、目ののを決してづけさせまいとする烈な警戒と、必の覚悟が宿っていた。
私は両を胸のさまでげ、ゆっくりとを屈めて線をわせた。
「怖がらなくていいよ。俺は怪しい者じゃないんだ。……コンビニで、君が落とした写真を拾ったんだよ」
私は着のポケットから、あの血のついた写真をそっと取りし、女に見えるように両で広げて見せた。
写真を目にした瞬、女のきな瞳が信じられないといった様子で見かれた。
「しゃしん……ひろって……くれたの……?」
「ああ。君が作って、落としてくれたんだろう?」
女はコクンと、さく頷いた。その瞬、ピンと張り詰めていた女のさな肩から、わずかに力が抜けていくのが分かった。