"全盲の義母が言い当てた味噌汁の色" 第12話
ただ事をしたとしか言っていません」 内の空気が、針を刺すように張り詰めていく。義母の横顔が、見るに引き攣っていくのが分かった。 「そ……そんなの、触ればかないことくらい分かるわよ!」 「ええ、触ればね。でも、あなた、部に入ってきた瞬、まだ壁に触れるから『何よこれ!』って叫んで、直線にこの塞がれた壁に向かってを伸ばしましたよね? ……目が見えないはずのが、どうしてくから見ただけで、勝が壁に変わっていることが分かったんですか?」
義母はをパクパクと魚のようにかしたが、声はなかった。 その濁っているはずの両目が、見かれ、憎悪に満ちた鋭いとなって私を真っ向から睨み据えてきた。 そこには、力を失ったれな老の面など微もなかった。狡猾で、悪に満ちた、の健康なの剥きしの敵が宿っていた。
「……お母さん。本当は、最初から見えていたんですよね?」
張り詰めた沈黙が、永のようにじられるほどく続いた。 やがて――義母はフッと肩の力を抜くと、嘲笑うような醜い笑みをその元に浮かべたのだ。
「……そうよ。しは、見えているわよ。それが何か悪いの?」
悪びれる様子など微もない、き直ったその態度に、私の腹の底からマグマのような激しいりが噴きがった。
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「……どうして、も見えないふりをして私を騙し続けてきたんですか!?」
私の声に対し、義母は底くだらない質問を聞かされたとでも言いたげに、く溜め息を吐きしてみせた。 「だってねえ……『目が見えない』って言っておけば、周りのがみんな親切にしてくれて、優しくしてくれるじゃないの」
信じがたい言葉だった。を疑うとは、まさにこのことだった。 義母は腕を組み、さも当然の権利であるかのように饒舌に語り始めた。 「の事故でね、確かに目の力は完全に失ったわよ。でもね、目は術が成功して、ぼんやりとだけど常活に困らない程度にはちゃんと見えていたのよ。……でもね、美玲さん。世のっていうのはね、『し見えます』なんて途半端なことを言うよりも、『完全に何も見えない盲目です』って言った方が、何倍も同してくれて、優しく尽くしてくれるものなのよ」
背筋が凍りつくような戦慄を覚えた。 この女は、の善と同をい物にし、を支配して都よく使役するために、実の息子や嫁までもにわたって欺き続けていたのだ。 「盲目だと言っておけば、健太は親孝の息子として気遣ってくれるし、美玲さん、あなただって私の言いなりになって、毎毎タダでご飯を作って運んでくれたでしょう? おかげで私は、面倒な事も料理も切しないで、毎晩好きなものをデリバリーで頼んで、優雅に暮らすことができたのよ。
……私はね、ただしだけ、楽をしたかっただけなのよ」
「……楽をするために……私を利用していたの……?」 私の界が、激しい眩暈でグラリと揺れた。 のひらに爪がい込み、血が滲むほどく拳を握りしめる。 私が実母をくした罪悪に苛まれ、泣きながら捧げてきたの歳。体調が悪くても、があっても、自分を犠牲にして運び続けた何千もの料理。そのすべてが、この欲な女が「楽をして級料理を貪るため」の都のいい具として消費されていたのだ。
義母は私の蒼な顔を見ろし、勝ち誇ったように唇を吊りげた。 「ねえ美玲さん、今更そんな悔しそうな顔をしたって遅いわよ。だってあなた、もうも私に尽くしてきちゃったんだから。今更私の嘘を暴いて騒ぎてたって、あなたの捧げてきたが全部無駄骨だったってことを、自分で証するだけじゃないの。みっともない真似はやめなさい」
その言葉を聞いた瞬――。 私のので、にわたって私を縛り付け、苦しめ続けてきたい鉄の鎖が、々に砕け散った。
「……分かりました、お母さん」 私のからた声は、自分でも驚くほど静かで、氷のように透き通っていた。 義母は私の落ち着き払った態度に眉をひそめた。 「あら、分かればいいのよ。じゃあからは、元の通りに――」