"夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉" 第4話
しみ。
いや、違う。
絶望。
それも違う。
これは幕けだ。
私のを取り戻すための、い戦いの。
私はゆっくりと鈴先に向き直ると、彼の目をまっすぐに見つめ返した。
そして、自分でも驚くほど落ち着いた声で、はっきりと告げた。
「いえ、鈴先、ありがとうございます。でも丈夫です」
私は度言葉を切り、ストレッチャーのの2に線を移す。
いや、ただの患者に。
「護師として当然の務めを果たします」
私は再び鈴先を見て、力く言った。
「この2の担当は、私がします」
私の言葉に、鈴先が息を呑んだ。
周囲のざわめきが、さらにきくなる。
ストレッチャーのの拓也の目が、信じられないというように絶望に見かれた。
なぜ私が担当をれないのか。
誰もがそうっただろう。
決まっている。
これから始まる最の復讐劇を、特等席で鑑賞するためだ。
こので、獄の底へと突き落とすために。
私の目に宿るたいに気づいたのか。
鈴先は、それ以何も言わなかった。
ただ、ごくりと喉を鳴らし、私の覚悟を受け入れたようだった。
さあ、ショータイムの始まりだ。
まずは、この忌まわしい結を解いてあげるところから始めなければ。
救急来の処置は、異様な緊張に包まれていた。
鈴先が、科と産婦科から応援に来た医師たちと、声で、しかしで協議をねている。
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そのも、私はの護師たちと共に、淡々とモニターを装着し、点滴のルートを確保していく。
私のは、寸分の狂いもなくいていた。
アルコール綿で皮膚を消毒する。
駆血帯を締め、静脈を探る。
慎に針を刺し、テープで固定する。
普段と何ら変わらない、いつもの業務。
ただ、その対象が、私のをめちゃくちゃにした張本たちであるという点を除いては。
「佐藤さん、本当に丈夫ですか?」
隣で器具の準備をしていた輩の嵐さんが、配そうに私の顔を覗き込んできた。
彼女の瞳は、に揺れている。
無理もない。
自分の夫が、しかもその姉と、こんな信じ難い姿で運ばれてきたのだ。
正気でいられるはずがないと、誰もがっているだろう。
私は彼女の方を向き、そっと肩にを置いた。
「丈夫よ、嵐さん。仕事だから」
私は彼女をさせるように、微かに微笑んでみせた。
だが、その笑みが能面のように何のも映していないことに、私自が1番気づいていた。
協議を終えた鈴先が、私のそばへやってきた。
その表は険しい。
「み咲さん、いや、佐藤護師」
状況を説する鈴先は、あえて私の姓を呼んだ。
私を同僚として扱うという、彼のプロとしての表示だろう。
私も背筋を伸ばし、彼の言葉に集する。
「診断は、おそらく嵌頓ペニス症候群だ」
鈴先は、ストレッチャーのの2を指差した。
「追突のい衝撃で筋肉が異常に収縮し、結したまま抜けなくなったんだろう」
彼は厳しい表で、モニターの数値を指差す。
「それに加えて、2とも事故の衝撃による内臓損傷の疑いがある。特に女性の方は、腹部脈からの血が考えられる、極めて危険な状態だ」
私は元の記録ボードを見つめ、確認するように尋ねた。
「分するには、科な処置が必ということですね」
鈴先は々しく頷いた。
「ああ。まずは全麻酔で筋弛緩剤を投与して、自然に分するか試す」
彼は腕を組み、溜め息をついた。
「それでダメなら、科に切することも考えなければならない。だが、それ以に女性の方のバイタルが定しない。オペに止するリスクもい」
鈴先の説を、私は静に聞いていた。
のでは、オペの順や必な器具が次々とい浮かんでいく。
しみもりも、今は考の邪魔になるだけだ。
そのだった。
「うう……ああっ……」
ストレッチャーので、拓也が本格に識を取り戻した。
彼はゆっくりと目をけ、自分が置かれている状況を改めて認識したのだろう。
血の気が引き、顔が恐怖と羞恥に染まっていくのが分かった。
そして、彼の線が、点滴の準備をしている私にぴたりと止まった。
「み咲……なんで……なんでおがここにいるんだ?」