"夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉" 第1話
「あら、拓也さんと麗子さんじゃないですか」
私のから放たれたその言で、救急来の喧騒がまるでが止まったかのように静まり返った。
夜の病院を切り裂くように鳴り響いていたホットラインのけたたましい音も、医師や護師たちの慌ただしい音も、のいていく。
周囲の空気は凍りつき、私のあまりにも違いで氷のようにたい声だけが、夜更けの空にクリアに響き渡った気がした。
だがこの、周りにいる誰もらなかった。
ましてや、ストレッチャーので無惨な姿を晒しているこの2には、る由もなかっただろう。
数分、いや、これからのの全てにおいて、彼らが絶望の淵で悔し続けることになるということ。
そしてこの瞬こそが、私のく暗い復讐の幕けなのだということ。
その夜も、私はいつものように総病院の救急来で夜勤の任務についていた。
壁に掛けられた計の針が、午2を指そうとしている。
昼の喧騒が嘘のように静まり返った院内には、折響くナースコールと、規則正しい医療器の子音だけが流れていた。
輩の護師である嵐さんが、そっと私のそばにづいてきた。
「佐藤さん、ちょっと休憩入りますね」
私は元のカルテから顔をげ、彼女に向かって軽く微笑んだ。
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「はい、お疲れ様です。嵐さん」
嵐さんが仮眠へと向かうのを見送りながら、私は再びカルテの理に集する。
私はこの静寂が好きだった。
自分の考がクリアになり、の様々な雑から解放される唯のだったからだ。
夫の拓也や義姉の麗子からの理尽な言葉も、このだけは私のから消えってくれる。
私はずっと、そうっていた。
その静寂を破ったのは、1本の話だった。
けたたましく鳴り響くホットライン。
救急隊からの緊急搬送をらせる、いつもの緊迫した音だ。
私は反射にちがり、受話器を素くに取った。
「はい。〇〇総病院救急来、護師の佐藤です」
緊迫した声で告げられる状況は、しかし、いつもとはし違っていた。
話の向こうから、焦燥に駆られた声がび込んでくる。
「こちら央消防です。交通事故による傷者、男女2名。繁華の裏での乗用にトラックが追突、乗用は破しています」
私は受話器を肩に挟み、元のメモ用にペンをらせた。
「男女2名、解しました。バイタルは?」
私はメモを取りながら、周囲のスタッフにテキパキと指示をす。
私の緊迫した声を聞きつけ、くにいた当直医の鈴先も駆け寄ってきた。
話の向こうの救急隊員が、なぜかごもる。
「それが、し状況が特殊でして」
経験の浅い隊員なのだろうか。
私はし苛ちをじながらも、静に続きを促した。
「特殊、どういうことですか?はっきり言ってください」
救急隊員は、を決したように息を呑み、そして信じられない言葉をにした。
「はい。それが、男女がその、性に結したまま、分できない状態です」
私はペンを持ったを止め、受話器をく握り直した。
「追突の衝撃で腹部を打しており、男性は識レベル、女性は識、血もひどく危険な状態です」
「はあ?」
わず、素頓狂な声が漏れた。
結したまま分できない。
瞬、何を言われているのか理解できなかった。
周りで聞いていたの護師たちも、顔を見わせ、ざわめき始める。
誰かが、信じられないといった様子で呟いた。
「冗談でしょう」
だが、ホットラインの向こうの救急隊員は、必の形相が目に浮かぶような声で叫び続けている。
「冗談などではありません。とにかく受け入れ準備をお願いします。あと5分で到着します」
ガチャン、と方に切れる話。
来の空気は瞬の困惑の、急速に緊張を増していく。
私は受話器を置き、鈴先の顔を見た。
「鈴先」
鈴先は鋭い線で頷き、声で指示をした。
「ああ、分かっている。全スタッフ、緊急オペの準備だ。
産婦科と科の先にも至急応援を請してくれ」
鈴先の檄がぶ。
私もすぐに気持ちを切り替え、ベッドの確保やオペへの連絡にる。