"貧乏老人を嘲笑った行員の末路" 第6話
藤堂は誰もいない支のキャビネットから希の評価資料を引き抜き、机のに並べた。類差し戻し率、待ち平均、の取引件数――どの数字も、藤堂が密かに調を加えれば再に落ちる程度の検査だった。
藤堂ののに、昼の景が何度も蘇っていた。の女がロビーの真んで自分の判断に逆らった。客ので、課代理の自分が恥をかかされた。その覚が藤堂のプライドをじわじわと焼き続けていた。
「の分際で……」
藤堂は携帯を取りし、神崎の番号にかける。
「神崎君、、支が本会議で終だ。そのに篠崎の本面談を済ませる。ちいを頼む」
「マジっすか? 解っす。エリート課代理のバックアップ、しっかりやらせていただきますんで。業績資料は私の方で揃えておきます。本事部にげれば格か配置転換は確実だ」
「それと、例の老客の件、何かから問いわせが来たは全て篠崎の窓対応の際ということで揃えておく」
「あ、そっか。あの貧乏ジジイの件も篠崎のせいにしとけば、課代理は無傷っすね」
「当然だ」
話を切ると、藤堂の元にい笑みが浮かんだ。の女を切り捨てれば、全てが丸く収まる。藤堂はそう信じて疑わなかった。
翌朝、支の空気はこれまでにないピリッとした緊張を帯びていた。
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本例会議で沢支は朝から、窓運営の権限は藤堂がすべて握っていた。通勤バッグを置いた希のがわずかに震えている。昨夜、自分自に誓った覚悟が今まさに試されようとしている。
その、の事務で、神崎の携帯にて続けにメッセージの着信音が鳴り響いた。何気なく画面を見た神崎の顔が、みるみる青ざめていく。
「あ、あれ……? 嘘でしょ……?」
「神崎君、どうした?」
「やばいです、課代理……俺の裏アカ、特定されました」
「裏アカ……?」
「支ので客の写真とか撮って投稿してた匿名のアカウントが……」
藤堂は神崎のから携帯をひったくった。タイムラインには、神崎が投稿していた支内の写真と嘲笑の言葉が何百件ものリツイートと共に並んでいる。コメント欄にはすでに支名と神崎の本名らしき報がき込まれ始めていた。
「バカ者! 顧客報の流だ! 内の備品配置からうちの支だと特定されているじゃないか!」
「す、すみません……! 課代理、これも全部俺やったことで、課代理は何も……」
「当たりだ! 私が指示した記憶など切ないぞ! 業務改善の議論とSNS流を緒にするな!」
藤堂の元にたい笑みが戻った。
「いいか、神崎。これはおの独断専だ。これから同期の女がおを止められなかった教育き届きが真の原因だ。
そういう筋きで申にき加えておく」
神崎の脳裏に瞬、あのの景が蘇った。両で自分の首を掴み、必に止めようとした希の顔が脳裏をかすめたが、神崎はその記憶を奥歯で噛みつぶした。
「そうっすね……全部、篠崎が悪い。あいつが俺を止めてくれなかったから……」
媚びるような笑顔の裏で、神崎は自分が今嘘をついたことを痛いほど自覚していた。通のでち止まった希のに、その会話の断片がはっきりと届いていった。希は両をく握りしめた。指の関節が真っになる。涙がにじみそうになるのを、必にこらえた。
そこに自扉がく音が響いた。古びたボストンバッグを抱えた久音次郎が支にを踏み入れる。通から戻ろうとしていた希のがピタリと止まった。あの方だ――。
次郎は藤堂と神崎には目もくれず、直線に希の窓へと歩み寄った。
「クオン様、本もお越しいただきありがとうございます。私の力で、ごなお気持ちにさせてしまい申し訳ございませんでした」
「君が謝ることは何つないよ」
藤堂と神崎が笑いを浮かべながら歩み寄ってきた。
「クオン様、のへのお続き、本もどうぞどうぞ」
神崎の笑い声に、藤堂も肩を揺らして吹きした。ロビーが息をんだように静まり返った。
次郎は古びたボストンバッグをゆっくりとカウンターのに置き、く落ち着いた声で告げた。