"貧乏老人を嘲笑った行員の末路" 第2話
「はい。すぐにお持ちしますね」
しばらくして、湯呑みに入った緑茶が次郎のにそっと置かれた。湯気のちるお茶を含むと、次郎の元に微かな笑みが浮かんだ。
「ありがとう。いい窓さんだね」
次郎は穏やかに微笑み、ボストンバッグを膝のに置いた。この老がどれほど途方もなく巨な経済をかしている物なのかを、このの員たちは誰もらなかった。
必な続きを終えた次郎は、丁寧にをげて支をにした。ボストンバッグのには、ピシリと綺麗に束ねられた百万円の現封筒がしっかりと収まっていた。
次郎の背が自扉の向こうに消えると、窓の隣で類理をしていた若い員が、でふっと吹きした。
「マジで丁寧にやってんすね、篠崎さん。あんな貧乏臭い爺い、適当にあしらっとけばいいのに」
そう言って笑したのは、希の同期入者である神崎蒼太、歳。都内の名私学を卒業し、元力者である父親のりで育ってきた男である。定営へも縁故で就職し、第支へ配属された。胸ポケットには、入祝いに父親から贈られたばかりの級そうな万がチラリと覗いていた。
「神崎君、お客様へのの聞き方、もうし気をつけて」
希はを止め、抑えた声ではっきりとたしなめたが、神崎は先で笑い、面倒そうに肩をすくめた。
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「いやいや、あの当て布のジャケット見ました? 絶対にした座なんて持ってないって。百万引きすのにわざわざ汗かきながら来るようなですよ。得でも何でもないっしょ」
「お客様をなりで判断するのは、員として番してはいけないことよ」
「うわ、ました。篠崎さんの真面目教科発言。だからうちって実績伸びないんすよ。効率、効率」
神崎は携帯話を取りし、周囲の目をはばかることなく画面をタップした。その指先は目をはからず素くいていた。
「君、まさか内の写真を……」
「裏アカすよ、裏アカ。フォロワー、しょぼい支のじゃ俺が番いんで」
液晶の画面には、まさに今てったばかりのろ姿の老が映しされていた。ならぬ久音次郎の姿である。添えられた文字は「今の貧乏客、1発目の物と」をする複数の侮蔑な絵文字だった。匿名のアカウントとはいえ、見るものが見ればすぐに分かる内容だった。神崎は毎のようにこうした適切な投稿を続けていた。指先が投稿ボタンへと伸びる。
「やめて、お願い……! それは本当にやってはいけないことだから!」
希は両で神崎の首を掴み、必のいで止めた。
「何、必になってんすか? 篠崎さんって本当に空気読めないっすよね。ま、庭の事で苦労してきたって、ああいう貧乏ジジイに同しちゃうんすかね」
「私ののことと、お客様への態度は関係ないわ」
「関係あるっしょ。同じ空気してますもん。なんか偏差値な匂いがするんすよね」
その言葉に滲む悪に、希の喉の奥がぐっと詰まった。それでも希は線をそらさなかった。庭の事はすでに事担当にも伝えてある。で噂されていることも、希はうすうす気づいていたのだ。
その、自扉が再びいた。次郎が希のいる窓のでち止まった。
「すまんね、さっきの案内をどこかに忘れてしまったようでね」
「あ、こちらですね。申し訳ございません、気づいておりず……」
希はテーブルの隅に置いてあった案内を両で渡した。その瞬、神崎はとっさに携帯話を自分の背に隠し、何事もなかったような顔で類理に戻った。次郎は気づいたそぶりも見せず、希に向かってくをげた。
「ありがとう。お数をかけたね」
「いえ、とんでもございません。お気をつけて」
お礼の言葉を述べると、次郎は再び支をにした。
「やれやれ、忘れ物か。ジジイ、聞こえてて戻ってきたのかとってヒヤヒヤしたよ」
希の胸の奥に、言葉にならないい悔しさがじんわりと滲んでいった。
それから数が過ぎた頃には、支の空気はすっかりと変わっていっていた。そのにいたのが、異着任してヶの課代理・藤堂啓介だった。