"深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児" 第9話
「嬉しいも、しいも、泣いていいんだ。泣くのは悪いことじゃない」
ひなは、怯えた声で確認した。
「泣いたら、叩かれない?」
俺は、く首を振った。
「絶対に叩かない。約束する」
俺は、ひなのにしゃがみ込み、目線を同じさにわせた。
「ひなちゃん、怖かっただろう?辛かっただろう。全部、してたんだね」
俺の言葉を聞いて、ひなの唇がわなわなと震え始めた。
「怖かった」
俺は、相槌を打った。
「うん」
ひなは、途切れ途切れに話し始めた。
「メイを守らなきゃって、泣かせちゃいけないって。ずっと、ずっと」
その瞬、ひなの目から粒の涙が堰を切ったように溢れした。
「でも、メイは泣くの。私、どうしたらいいか分からなくて」
俺は、涙を流すひなの顔を見つめた。
「よく頑張ったね。ひなちゃん」
ひなは、しゃくりあげながら答えた。
「頑張った」
俺は、ひなのを優しく撫でた。
「ああ、4歳なのに、妹を守って本当によく頑張った」
その言葉を聞いた瞬、ひなのので張り詰めていた糸がプツリと切れた。
「うわあぁぁっ」
ひなは、顔をくしゃくしゃにして初めて声をげて泣いた。
これまでの奥底に押し殺してきたが、気に溢れしたのだ。
「怖かった。ママ帰ってこなくて、お腹空かせて、私、痛くて」
俺は、両を広げてひなをく抱きしめた。
「もう丈夫だよ」
俺の胸ので、ひなのさな体が激しく震えている。
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「叩かれるの、痛かった。でも、叩かれるの、もっと嫌だった」
俺は、ひなの背を擦りながら言った。
「もう叩かれないよ。俺が守るから」
ひなは、俺のシャツをく握りしめた。
「本当に?」
俺は、ひなの元で囁いた。
「本当だよ。ひなちゃんもメイちゃんも、絶対に守る」
ひなは、俺の胸に顔を押し当てて泣き続けた。
彼女が4溜め込んできたしみと恐怖。
それを全て吐きすように、声の限りに泣き叫んだ。
その、背から音がして、りんが駆けつけてきた。
「蒼太さん、ひなちゃん」
りんも、目から涙を流しながらひなの隣にしゃがみ込んだ。
りんは、ひなの背を撫でた。
「ひなちゃん、辛かったね。よく頑張ったね」
ひなは、顔をげてりんを見た。
「りんお姉ちゃん」
りんは、ひなの涙を指で拭った。
「もう1で頑張らなくていいんだよ。私たちがいるから」
ひなは、俺の腕かられ、今度はりんに抱きついて声をげて泣いた。
俺たち3は、を見ながら共に涙を流した。
朝がを照らし、ザザーッという波の音が優しく周囲に響いていた。
やがて、ひなの泣き声がしずつさくなっていった。
泣き疲れたのか、ひなはすっかり静かになった。
ひなは、りんの胸から顔をし、再びを見た。
「、本当に綺麗」
俺は、ちがってを指差した。
「ひなちゃんが、笑顔でいられる所だよ。
ここは」
ひなは、俺を見げた。
「また、来ていい?」
俺は、笑顔できく頷いた。
「もちろん、何度でも来ていい。約束だよ、ひなちゃん」
ひなは、さく微笑んだ。
その顔には涙の跡が残っていたが、その笑顔は作られたものではない本物だった。
俺は、ひなに優しく語りかけた。
「ひなちゃん、これから児童相談所のとくけど、怖くないよ」
ひなは、しそうに俺のを掴んだ。
「お兄ちゃんと、また会える?」
俺は、力く答えた。
「絶対に会える。約束する」
ひなは、俺の目を見た。
「約束?」
俺は、の指を差しした。
「ああ、指切りしようか」
ひなも、自分のさな指を差しし、俺の指に絡めた。
俺たちは、緒にった。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本ます。約束だよ」
ひなは、嬉しそうに言った。
「約束」
りんも、横から指を差しした。
「私も約束する。必ず、ひなちゃんに会いにくからね」
3で指を絡めい、固い約束を交わした。
ひなは、りんを見て言った。
「ありがとう」
ひなの目には、もう先ほどまでの恐怖はなかった。
代わりに、さな希望のが宿っているように見えた。
俺たちは、庭からリビングに戻った。
リビングでは、母が台所でラップを使って何かを包んでいた。
母は、包みをに持って俺たちの方へやってきた。
「蒼太。これ、ひなちゃんに持たせてあげて」
それは、母の作りのおにぎりだった。
ふっくらと握られた、さな角形のおにぎりがいくつも並んでいる。
俺は、母からそれを受け取った。