"洋食屋の絆と、高級寿司屋の逆転" 第6話
「へえ、な女を連れてこんな級でデートかよ? おいおい、の丈にわない見栄なんて張るんじゃないよ、貧乏くさい」 いきなり初対面の真央に向かって失礼な嫌を浴びせてくるの態度に、真央は驚いたように目を丸くした。
「……私の妹です。まだ若いんで、派な化粧はしていませんが、自然体で分綺麗ですから、余計なお世話ですよ」 いつもなら職で何を言われてもからへ受け流していた私も、今という切な、しかも最の妹を馬鹿にされたことに対しては、どうしても黙って見過ごすことができなかった。 私のそのきっぱりとした反論が気に入らなかったのか、は顔を険しく歪め、私を鋭く睨みつけた。 「んだと? お、そのの聞き方はなんだよ!」 すると、の隣にいた連れの女性が、につくい声でを挟んできた。 「ちょっと、なんなのよこのたち! 私の肌に張りがないって言いたいわけ? ほんと、で油まみれになって底辺の作業員として働いてるようなが、来るようなじゃねえんだよ、ここは!」 女性は嫌悪を隠そうともせず、私と真央を値踏みするように睨みつけた。 「せっかくの級なお寿司のに、なんか械油の匂いがプンプンしてきて、本当に気分が悪くなるんだけど! 体、卒の作業員なんて恥ずかしくないわけ? 私だってくらいはちゃんとてるわよ!」
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は私を愚弄するように、と品のない笑い声をげた。
隣で、真央の肩がりで激しく震えているのが分かった。真央がちがろうとしたので、私は彼女の腕を慌てて掴み、首を横に振って制止した。 「……やめろ、真央。相にするな」 「でも、お兄ちゃん……! あんなに言われて、どうして黙っていられるの……!?」 「せっかくおが俺にご馳してくれてるんだ。あんな奴らのせいで、この美しいご飯をまずいものにしたくないんだよ」 私が声で必に宥めると、真央は悔し涙をこらえながら、どうにか席に座り直した。
たちは将に向かって傲に言い放った。 「おい将、こんな底辺の貧乏なんかをカウンターの真んに座らせておいたら、こののブランドの格がガタ落ちになるぜ。まあいいや、俺たちには番い特のコースを頼むわ。違っても、そこの貧乏どもと同じ物の材なんて使うなよな。貧乏臭くてこっちはう気にもなれねえからさ」 はそう言い残すと、私たちのすぐ隣の席にドカッと躾に腰をろした。
内の空気が瞬で凍りついた。 カウンターので包丁を握っていた将のが、ピタリと止まった。将の鋭い目が、獲物を狙う猛禽類のように恐ろしくを放った。将はゆっくりと包丁をまな板のに置き、の方へと徹な線を向けた。
「……今、なんて言った?」 その声は、先ほどまでの温かみのあるトーンとは似ても似つかない、底えするようないりを含んでいた。 「は? だからよ、こんな底辺の作業員みたいな……」 「おい」 将はの言葉を遮り、まるで別のような凄まじい剣幕で、眉にいシワを寄せて鳴りつけた。 「――あんたのようなには、うちの料理をす皿など枚もない。今すぐ、このからていってくれ」 予の主の拒絶に、は目を丸くして言葉を失った。内は完全に静まり返った。穏やかで客あしらいの慣れていたはずの将のあまりの豹変ぶりに、は完全に面らっていた。
「な、なんだよその態度は! 客に向かって『ていけ』とはどういうことだ! ならいくらでも払うって言ってるだろ!」 「の問題じゃない!」 将はカウンターのの板をドンとく叩いた。その轟音に、連れの女性が「きゃっ」とさく鳴をげた。 「俺はな、さえ満にられなかった卒の板だ。若い頃は貧乏で、そのそののべる米を確保するのすら命がけで苦労した。義務教育が終わると同に『しでも親を楽にさせたい』というで料理の世界にび込み、毎包丁を握って、血の滲むような努力をしてここまでいがってきたんだ!」 将の目に、いものがこみげていた。